日本経団連の財政制度委員会企画部会(筒井義信部会長)は10月21日、都内で会合を開催し、慶応義塾大学経済学部の土居丈朗教授から、「新政権の下での財政改革に関する課題」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。
政権が代わり、一般会計だけではなく、特別会計も含めて包括的に見直そうとしている。予算はこれまで一般会計、しかも当初予算に目が行きがちだった。特別会計は、各省独自の運営下で財務省と各省は、半ば相互不可侵でやってきた。ここにメスを入れるためには、ボトムアップ型からトップダウン型の予算編成に変えて予算全体で効率的に配分すべきである。
また、従来「補正回し」というやり方が行われていたが、財政規律を守る観点から、シーリング(概算要求基準)のある当初予算で計上しなかったものを後から安易に補正予算で認めるようなことがないようにする必要がある。現政権が力を入れている無駄削減については、予算編成時だけでなく、予算の執行面でも、節約を促す仕組みをつくり、実効性を上げるべきである。このほか、英国で導入されている複数年度を視野に入れた予算編成が検討されている。これが有効に機能するには、予算編成時に具体的に目標設定をセットで示させ、事後にきちんと評価し、PDCAサイクルを回して、インプット重視からアウトプット・アウトカム重視にすることが重要である。
「ひもつき」補助金と言われる国庫支出金については、社会保障費の割合が高まっており、公共事業費に係る部分は小さい。ここだけ一括交付金化しても、地方が自由に使えるお金は少なく、地方交付税も含めて見直すべきである。国庫支出金は国が地方に「義務付け」「枠付け」するものに対する財源保障機能があり、地方交付税にもこの機能と地方間の税収格差を平準化する財政調整機能がある。そこで財源保障機能の部分はまとめて一括交付金とすべきである。問題となるのが、一括交付金で保障する行政水準であるが、経常的経費と投資的経費に大くくりに分けて、何がナショナルミニマムか、あらかじめ国が条件を決めておくべきである。そうしなければ、医療における「出来高払い」のように地方自治体の言い値で決まってしまいかねない。
現政権は、今後4年間消費税を増税しないと言っているが、消費税は社会保障費の増加を賄うためには有力な財源である。消費税が望ましい理由は、勤労世代に過重な負担を求めることがなく、貯蓄率低下が懸念されるなかで貯蓄の二重課税を避けられるからである。消費税の引き上げに伴い、低所得者の負担を軽減するため、軽減税率を入れる考え方もあるが、所得税に、給付付き税額控除を導入し、所得再分配の機能を発揮する方が良いと考える。