日本経団連タイムス No.2971 (2009年10月22日)

提言「公正取引委員会による審判制度の廃止及び審査手続の適正化に向けて」を公表

−早期の見直し求める


日本経団連は20日、「公正取引委員会による審判制度の廃止及び審査手続の適正化に向けて」を公表し、政府与党はじめ関係各方面に建議した。度重なる独占禁止法の改正により、違反事業者に対する制裁は大幅に強化される一方、公正取引委員会(以下、公取委)が行う審査・審判手続の公正さに欠ける仕組みや恣意的な運用に対する不信感が日本経団連をはじめ国内外から指摘されている。今回の提言は、適正手続の確保や予見可能性の向上、さらには国際的な制度のハーモナイゼーションが喫緊の課題となっており、今年6月の改正独占禁止法の附則や国会附帯決議でも、今年度中に審判制度を全面的に見直すこと等が明記されたことから、早期の見直しを求めるものである。提言の概要は以下のとおり。

1.不服申立手続の公正・公平性の確保

公取委が出した課徴金納付命令等の内容に不服がある事業者は、公取委の審判で争うことになるが、これは公取委に自らが下した処分の当否について再度判断させるものでしかなく、中立性を欠く制度となっている。このような制度は、国内の他の行政機関や諸外国の競争当局と比較しても特異である。また、審判の結果(審決)に対して不服の場合には、東京高等裁判所において争うことになるが、裁判所は公取委の審判で認定された事実に拘束される(「実質的証拠法則」)。公正・公平な不服申立手続を確保すべく、以下のような制度変更を求める。

■ 具体的提案

  1. (1)公取委による審判を廃止し、裁判所に直接提訴できる仕組みとし、裁判所が中立的な立場から処分の当否について判断する。その際、まずは東京地方裁判所の専属管轄として、制度の円滑な移行を図る。

  2. (2)審判の廃止に伴い、「実質的証拠法則」も廃止する。

2.国際水準に適う新たな審査制度の構築

公取委の行政処分の当否を争う裁判において、公正かつ迅速な審理が行われるためには、その前段階である公取委の審査手続において、事業者側の正当な防御権を確保するとともに、立入検査、取り調べ、証拠収集等が適正な手続に基づいて行われる必要がある。日本以外の諸外国では、さまざまな権利が防御権として当然認められている現状を踏まえ、以下のような審査手続とする必要がある。

■ 具体的提案

  1. (1)弁護士立会権等の保障
    事業者に対して、立入検査・供述時の弁護士立会権、弁護士と顧客事業者との間の通信内容等に対する秘匿特権、提出命令拒否権等の正当な防御権を与える。

  2. (2)公正な審理を行うための証拠開示
    争点を事前に明らかにし効率的な審理を尽くすため、審査段階において、当事者に、公取委の立入検査時に資料を謄写できる権利、供述調書の内容を確認・修正できるようその写しの交付や公取委が保有する関係資料の開示請求権等を与える。

  3. (3)処分前の適正手続の確保
    現行の事後審判制度のもとでは、処分が出される前に事業者に十分な釈明の機会が与えられていない。事前に十分な聴聞手続を設け、また命令を出す際に公取委が認定した事実およびその理由、証拠を明確に示す。

  4. (4)第三者に対する秘密保持
    開示される証拠について、第三者に対する企業秘密を保持する。

【経済基盤本部】
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