解説する国立感染症研究所の谷口氏 |
日本経団連事業サービスは9月24日、新型インフルエンザに対する企業各社の対策整備を支援するため、日本経団連と連携してセミナーを開催。企業の担当者など約170人が参加した。
今春に発生したH1N1型の新型インフルエンザについては、弱毒性でありながら世界各国に感染伝播し、その感染力の強さが指摘されている。今後、本格的な流行期である秋・冬を迎え、さらなる感染拡大が予想されることから、今回のセミナーは、(1)H1N1型新型インフルエンザの特徴(2)国の対策・方針(3)企業の取り組み事例紹介――の3つの構成で開催した。
最初の「H1N1型新型インフルエンザの特徴」については、国立感染症研究所感染症情報センター第一室長の谷口清州氏が解説。谷口氏は、基本は季節性インフルエンザの延長線上のものだが、患者数は増加傾向にあり、ハイリスク者(基礎疾患を持つ人など)を中心に一定の重症化例がみられること、またBCP(事業継続計画)は事業所の性質などを鑑み作成することが必要であることを指摘。そのうえで、個人の感染拡大防止の意識と知識が重要であることなどを強調した。
「国の対策・方針」については、厚生労働省新型インフルエンザ対策推進室国際情報専門官の平川幸子氏が、新型インフルエンザ対策のポイントとして、(1)地方自治体と連携した適切な感染防止対策の実施(2)大規模な流行に対応した医療体制の整備(3)ワクチンの確保と接種の実施(4)的確なサーベイランス(5)広報の積極的な展開――の5点を挙げ、これらを組み合わせて総合的に対策を実施すると説明した。
3つ目の「企業事例」については、日本ユニシスCSR推進部長の多田哲氏が、同社の新型インフルエンザへの対応と対策について紹介した。多田氏は、行動計画を被害度別に3段階(重度、中度、軽度)に分けて対応している点や、ICT(情報通信技術)を活用した安否確認の実施、在宅勤務の利用、社員の教育といった諸施策を説明。一方で課題として、社会機能維持のための業務の優先順位付けや業界全体としての共通ルールの整備や要員確保の問題、取引先との契約問題、労働法制面での人事上の義務や責任問題などを挙げた。