日本経団連タイムス No.2967 (2009年9月17日)

国交省河川局との懇談会を開催

−最近の河川行政の動向と今後の取り組みを聴く/都市・地域政策委員会企画部会


日本経団連の都市・地域政策委員会企画部会(平井茂雄部会長)は9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、国土交通省河川局の佐藤直良局長から、最近の河川行政の動向や今後の取り組みなどについて説明を聴くとともに意見交換を行った。国土交通省の説明の概要は以下のとおり。

■ 災害に備えた危機管理体制の強化

わが国の河川は諸外国に比べて急勾配であり、また都市の大部分が洪水氾濫域に集中している。特に近年、総雨量が1000ミリを超える大雨や時間雨量100ミリを超えるゲリラ豪雨が頻発し、各地で水害、土砂災害が発生している。河川局は、減災を目的に、堤防やダム、遊水地等のハードを整備することに加え、ソフト面からも危機管理体制を強化している。例えば、ゲリラ豪雨の監視強化のためのXバンドMPレーダーの配備や、水害予報センターによる情報提供などがある。また大規模自然災害時に地方公共団体等に対して円滑・迅速に技術的支援を実施する緊急災害対策派遣隊(TEC‐FORCE)の創設、河川の氾濫等の情報を提供する洪水ハザードマップの作成、気候変化による雨量・流量・海面水位などの影響のモニタリングや予測強化なども進めている。こうしたソフト面の対策において、例えば情報提供などで企業の協力を得たいと考えている。

■ 新たな取り組み

災害対策と併せて、次のような新たな視点も取り入れて、今後の都市・地域における河川整備事業を進めていきたいと考えている。

第1に、まちづくりと一体となった治水である。越水しても決壊することのないスーパー堤防を順次、整備しているが、この堤防上面は、複合的な土地利用が可能であり、まちづくり事業と一体で堤防を整備することで良好な街が形成される。

第2に、水辺のにぎわいの創出である。川辺を活用したオープンカフェ、水辺プラザ、舟運を活用した観光・農業漁業振興など、水辺を活かして地域活性化を図っている。

第3に、河川環境の保全・再生である。水辺を整備するにあたって自然に配慮した護岸工事を行ったり、自然再生の取り組みの一環として蛇行河川の復元を計画したりしている。

第4に、新技術の活用である。川の落差を利用した小水力発電の普及促進を図るとともに、河川管理用光ファイバーの電気通信事業者への開放、レーザプロファイラーによる河川流域の詳細地形の測量などを行っている。また将来的には、平時は自動車交通の用途に使用し、豪雨時には排水施設として利用できるスマート・トンネルのような事業も試みたい。

社会経済情勢が厳しく、今後、公共事業への積極的な財政支出が望めない中、必要な時に必要な物を整備するという観点から、インフラ整備にもPFIなどを用いて民間の資金やノウハウを活用する機会がますます増えるであろう。河川事業と企業活動を連携して進めることにより、投資効率が高まり、より大きな付加価値が生まれることを期待している。

【産業政策本部】
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