ABAC金融・経済作業部会で議長を務める渡辺委員 (メインテーブル・右から4人目) |
2009年のABAC第3回会議が、8月24日から27日まで、ベトナムのダナンで開催された。ABAC(=APECビジネス諮問委員会)は、APEC首脳に対し、ビジネスの立場から提言し、直接対話を行うことが許されている唯一の民間諮問機関。日本からは、渡辺喜宏委員(三菱東京UFJ銀行顧問)、相原元八郎委員(三井物産顧問)、森本泰生委員(東芝常任顧問)が首相からABAC委員を委嘱され、政策提言活動を行っている。
今回の会議では、11月のAPEC首脳会議を前に提出する政策提言書の最終的な取りまとめが行われ、全体会議で承認された。
提言書ではまず、経済回復の兆しに関して慎重な見解を表明し、保護主義への対抗姿勢の堅持をはじめとして経済回復が持続するための対策を講じるよう促している。
また、今年の提言の柱として、(1)地域経済統合の加速と、アジア太平洋自由貿易地域(FTAAP)創設に向けた時間軸を設定するこ(2)保護主義に徹底的に抵抗すること(3)規制の透明性向上、迅速な意思決定、手続きの調和、法制度の整備により投資フローを増加させること(4)気候変動対策について、12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15でビジネス界にとって予測可能かつ安定的な環境をもたらすような合意をすること――を提示している。
このうち、FTAAP創設に向けた時間軸設定については、閣僚が2010年半ばまでに交渉の時間軸とモダリティ案を策定し、11月に開催されるAPEC首脳会議で判断を仰ぐよう要請。また、ABACの考えるFTAAPについて、「貿易、サービス、投資、国内問題(Behind‐the‐border issues)を網羅し、すべての参加国・地域と人々が恩恵を受け、必要により支援を得ることができる『包摂的成長』(Inclusive Growth)をめざすもの」としている。
また、保護主義への対抗については、WTOドーハ・ラウンドを2010年末以前に成功裏に決着することが、貿易投資促進、保護主義への対抗にとって大きな刺激となると訴えている。
日本ABACの提言からは、(1)APEC域内を広くカバーするAEO(Authorized Economic Operator=認定事業者)相互認証制度の構築(2)APECビジネストラベルカード(ABTC)の利便性の向上と運営面の改善(3)環境物品・サービスの貿易促進――等が提言書に盛り込まれた。
提言書は、10月中旬にABAC議長からAPEC議長に手渡され、その後、各国・地域のABAC委員がそれぞれの首脳に提出する。11月にはAPEC首脳とABAC委員との直接対話が行われる。
この首脳宛提言書とは別に、渡辺委員が議長を務める金融・経済作業部会のイニチアチブで「APEC財務大臣宛の緊急書簡」が発送されており、このプレスリリースも行われた。
この書簡の中でABACは、自己資本規制と金融改革に関する規制の変更について、より一層の官民対話を行うよう促している。併せて、規制強化にあたっては、リスク管理やコーポレート・ガバナンスなどの包括的な金融改革パッケージの一部をなすべきであること、さらに出口戦略の実施にあたって慎重を期すよう求めた。