「経営とは時代認識」――。寺島実郎アドバイザーのこの言葉でスタートした第20期日本経団連フォーラム21が、7月30日から8月1日にかけて客船飛鳥IIで2泊3日の合宿講座を行った。茂木賢三郎キッコーマン相談役、山内昌之東京大学大学院教授、寺島実郎三井物産戦略研究所会長の3人のアドバイザーが講師として乗船し、「日本の進路を考える」を総合テーマに活発な討議を展開した。
合宿を前に、今期初回となる6月講座で寺島アドバイザーが「世界の構造転換と日本の進路」と題して、詳細なデータをもとに講演。続く7月講座で山内アドバイザーが「中東政治力学の変動」をテーマにイラン・イスラム革命体制について、さらに茂木アドバイザーが日本社会の将来を展望するにあたって立ちはだかる多くの課題を列挙し、合宿における討議の基調となる問題提起を行ってきた。各アドバイザーの基調講演を受けてフォーラムメンバーは、それぞれ課題図書や資料をもとに関心事項、見解をまとめ、船内の討議に臨んだ。
船内では寺島アドバイザーが再度講演に立ち、合宿のスタート地北海道とロシアのつながりを、歴史を追って紹介。さらに日本・中国・アメリカ3国の相関関係を、歴史の中で考えるとともに、改めて日本の立ち位置を見定める必要があることを強調した。また、日本の技術力と産業力、そしてマネーゲームの国ではないという点で、日本に対する世界の評価が上がっているものの、日本にはガバナンス、すなわち束ねる力がないことを指摘。束ねる力を取り戻し発揮することができれば、日本再生も可能であると主張した。
その後の討議では、茂木アドバイザーがメンバーの関心事項・見解を、(1)経済運営のパラダイム(2)少子・高齢化(3)環境(4)教育・人材育成(5)政治・外交・安全保障――などに分類し、それぞれについて討議した。
メンバーからは、「日本が強みとする分野への戦略的な育成・投資が必要」「産学連携を進めるために政治力に期待」「家庭・教育の場におけるしつけをはじめとする基礎教育が重要」など、自身の経験・体験に基づく積極的な意見や提言が挙がった。
討議を受けて山内アドバイザーが、人材を社会に送り出す立場から発言。理工・技術系の優秀な学生たちが法学・経済系の学生に比べ就職が難しい状況にある事実を紹介し、しかるべき待遇による就業の機会を企業に求めた。
また、最近は公務員に対する世間の目が厳しく、国のために働こうと公務員をめざす学生が激減している状況から、各省庁で人材の枯渇が起こりかねないことにも懸念を示し、企業と同様、国にも優秀な人材が行くよう民間部門から提言がほしいとも訴えた。
日本経団連フォーラム21は1980年にスタートし、今年度20期を迎えた。参加メンバーは日本経団連会員企業で、トップの推薦を受けた経営幹部。これまでに600名近い修了生を送り出した。
チーフアドバイザーを日本経団連会長が務め、そのほか企業トップ、学識経験者らがアドバイザーとして講演やディスカッションを行う。
今期は御手洗冨士夫会長をチーフアドバイザーに、茂木、山内、寺島各アドバイザーのほか竹内弘高一橋大学大学院教授もアドバイザーを務める。
毎月の講座のほか、11月には海外視察、12月にはこれまでの修了生も参加する拡大講座を行う。来年2月には最終講座として総まとめの合宿を行い、3月に修了する予定。
日本経団連フォーラム21に関する問い合わせは、日本経団連事業サービス研修担当(電話03‐6741‐0042)まで。