日本経団連タイムス No.2964 (2009年8月27日)

改正入管法について意見交換

−改正の概要と今後の対応などで説明聴く/外国人材受入問題に関するワーキング・グループ


日本経団連は7月31日、東京・大手町の経団連会館で外国人材受入問題に関するワーキング・グループを開催、法務省入国管理局の山田利行参事官が出入国管理及び難民認定法(入管法)改正の概要と今後の対応などについて説明し、意見交換を行った。山田参事官の説明概要は次のとおり。

■ 新たな在留管理制度

今回の入管法改正は、戦後最大の改正といわれるほど大がかりなものである。特に新たな在留管理制度は、法務大臣が外国人の在留に関する必要な情報を継続的に把握することを可能にした。従来の制度では、外国人が転居した際など在留状況に関する正確な情報を把握することができず、就学通知や国民健康保険などの住民サービスの提供にも支障を来していた。そこで新制度では、(1)上陸審査(2)上陸許可時に「在留カード」を発行(3)在住する市区町村へ住居地を届出(4)市区町村と法務省が住居地情報等を共有――という一連の手続きを定めた。
従来は不法滞在者でも外国人登録証を所持することができた。今後は正規に在留資格を取得した外国人のみが在留カードを所持することができるため、在留カードの有無で適法な滞在者かどうかが判断しやすくなる。新制度では、外国人は居住地を定めてから14日以内に市区町村に届け出ることになる。これを怠った場合には罰則(20万円以下の罰金)が課されるが、住所変更を届け出ることができないやむを得ない理由がある場合は除外される。
今回の法改正では、適法に在留する外国人の利便性を向上させるため、(1)在留期間を最長「3年」から「5年」に延長(2)「留学」の在留資格についても「2年3月」の最長在留期間を「4年3月」に延長(3)みなし再入国許可制(出国後1年以内に再入国する場合、原則として再入国許可を受ける必要なし)(4)再入国許可を受ける場合、有効期間を「3年」から「5年」に延長――などの措置が講じられている。
また、新制度を的確に運用するため在留カードにICチップを内蔵、偽造を防ぐ措置を設けるとともに偽変造に対する罰則を大幅に強化した。最近増加している組織的な犯罪対策として、偽造カードの所持、譲渡、準備行為等それぞれに罰則を適用、偽造にかかわる各段階で取り締まりを強化できるようにした。

■ 研修・技能実習制度

研修・技能実習制度の改正では、研修生の労働者性を認めることにより法的保護を強化し、現在起こっている問題を解決するための緊急的な措置となっている。そのため現在の制度そのものの抜本的な改革とはなっていない。
大きな変更点としては、従前の在留資格「研修」の活動のうち、実務研修を伴うものについては「技能実習第一号」という在留資格で在留することになる。2年目以降も在留する場合には技能検定等基礎2級に合格し、「技能実習第二号」に変更することになる。新しい在留資格を設けた目的は、これまで在留資格「特定活動」というあいまいな立場に置かれていた研修・技能実習生の身分を法の中で明示することで、労働者としての地位・立場を確立することである。なお、これまでの研修のうち、実務研修を伴わないものや国などが実施するものについては、「研修」の在留資格で活動することができる。

■ 今後の対応

新しい在留管理制度の導入は3年以内を見込んでいる。これは、新制度下では法務省と市町村を電算システムで結ぶとともに、在留カードを空港などの入国審査窓口で発行するため、混乱を来さないよう綿密に制度設計をする必要があるからである。また、在留カードは、新制度施行前に入国した外国人については段階的に導入するため、3年間は外国人登録証を在留カードとみなす規定としている。一方、研修・技能実習については、省令改正等を行い1年以内に施行する予定である。

【産業政策本部】
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