日本経団連の住宅政策委員会企画部会(立花貞司部会長)は7月22日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京大学大学院工学系研究科の坂本雄三教授から、住宅における温暖化対策について説明を聴くとともに意見交換を行った。坂本教授の説明の概要は以下のとおり。
米国のオバマ大統領就任や世界同時不況を背景として、世界がいわゆるグリーンニューディール政策として環境政策に力を入れるのではないかということもあり、温暖化問題が世界の政治課題となっている。わが国でも先般、麻生総理がCO2削減の中期目標を打ち出した。国内外で温暖化対策への取り組みの重要性が高まっている。
わが国は京都議定書により、1990年比でCO2排出量の6%削減を義務付けられているが、現状では90年の排出量を上回っている。その原因として、家庭や業務用建築物の排出量が多いことが挙げられる。家庭については世帯数の、業務用建築物については床面積の増加が要因となっている。
先般、麻生総理が発表したわが国の温室効果ガス削減の中期目標についても、これら民生部門の対策がカギとなっている。
家庭部門の省エネを進めるため、昨年5月に省エネ法が改正され、今年1月には改正省エネ基準が告示された。それに伴い、建築物に対する省エネ基準が強化されるとともに、住宅事業建築主の判断基準が新設された。
一方、省エネに向けた政策支援も行われている。税制面では、省エネ等級4を要求している長期優良住宅について、所得税等の減税措置が講じられた。また、住宅の断熱改修に対する減税措置の拡充や、省エネ性能の高いビルに対する減税措置も講じられた。
また、省CO2住宅・ビル、中小ビルや住宅の省エネ改修、さらには長期優良住宅に対する先導的プロジェクトに対する補助金制度も設けられている。
わが国の全家庭の平均的なエネルギー消費は、給湯と冷暖房・換気が6割程度を占める。私は省エネ効果が高い方法として断熱とヒートポンプを推奨している。
断熱については、防露性、気密性の確保が重要である。気密性の確保についてはかなり進んでいる。一方、窓の断熱は依然として大きな課題である。断熱は省エネ効果に加えて、温かさを確保するという点で健康にも効果がある。
ヒートポンプは、熱源として外気の熱を集め、住宅の暖房や給湯に使うもので、化石燃料の燃焼よりも圧倒的にエネルギー効率が良い。
今年4月から、住宅事業建築主の基準として、外皮と設備の総合的基準が適用されている。これは住宅で使う暖房、冷房、給湯、換気、照明の5用途について、エネルギー消費量を評価するものである。この基準でも、断熱とヒートポンプが最も快適で安価に省エネを実現できることが証明されている。
わが国の住宅は92年以前に建てられたものが7割以上を占める。今後は、既存住宅の省エネ改修が重要となってくる。また、経済的に採算が取れる省エネ手法は現状では少ないので、国などが投資リスクを負う仕組みが必要となろう。