日本経団連の住宅政策委員会(渡文明委員長)は7月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、国土交通省住宅局の川本正一郎局長ならびに井上俊之大臣官房審議官から、住宅政策の現状と課題について説明を聴くとともに意見交換を行った。国土交通省の説明の概要は以下のとおり。
住宅市場は、ここ10年程度120万戸前後で推移してきたが、2007年に建築確認の問題により落ち込み、さらに昨年未曽有の経済危機により、100万戸を割り込んだ。直近では、年換算で80万戸割れと厳しい状況にある。
一方、最近、マンションの在庫調整が進み、住宅展示場への来場者数や住宅の消費者マインドが上向くなど、市場に明るさが見えつつある。
昨年来の危機的な経済状況に対応するため、平成21年度予算および税制改正、さらに平成21年度補正予算関連で、住宅市場活性化のための数々の対策が講じられた。
例えば税制関連では、過去最大規模のローン減税、長期優良住宅の新築等の場合の所得税の特別控除、既存住宅の省エネ・バリアフリー・耐震改修工事に係る所得税の特別控除、贈与税の非課税措置の拡充などの措置が講じられた。
最近の住宅政策の取り組みとしては、第1に住宅の長寿命化がある。今年6月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行された。これにあわせ、長期優良住宅に対する税制、予算措置が講じられている。
第2は、住宅・建築物の省CO2対策である。住宅・建築物のCO2排出量は現在、全排出量の3分の1を超えており、この削減は喫緊の課題である。そのため、08年に省エネ法を改正し、今年4月から施行されている。
第3は、住宅のセーフティネットの充実である。高齢化が進展する中、バリアフリー化した住宅の割合はまだまだ低い。住宅のバリアフリー化に加え、介護が必要な方に対するケアサービスを組み合わせた住宅の供給が必要である。今後、厚生労働省と連携し、介護福祉政策と住宅供給政策を協調して講じていく。
当面検討を行っている住宅政策として、第1に民間賃貸住宅政策がある。民間賃貸住宅は住宅ストックの約3割を占め、この質の向上を図ることがわが国の住生活の質の底上げにつながる。
第2は、既存住宅の流通およびリフォーム市場の整備である。この市場は依然として伸び悩んでいる。その要因とされる、情報の不足、保証の問題等に対応していきたい。
第3は、省エネである。先般、地球温暖化対策のわが国の中期目標が発表され、05年比15%削減の目標が示されたが、その達成に向けた対応を行う。
そのほか、いずれ消費税の引き上げが予想される中、住宅の消費税についてどう扱うかは大きな課題となっている。
また、今年10月に住宅瑕疵担保履行法が施行されるが、混乱が起こらないよう、取り組んでいきたい。