日本経団連タイムス No.2961 (2009年7月30日)

「日米EPAに関する共同声明」発表

−オバマ政権との「戦略経済対話」設置等求める/アメリカ委員会と在日米国商工会議所


日本経団連のアメリカ委員会(長谷川閑史委員長)は21日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、「日米EPAに関する経団連アメリカ委員会・在日米国商工会議所(ACCJ)の共同声明」を発表するとともに、国際大学研究所の信田智人教授から、オバマ政権の外交・通商政策について講演を聴いた。
アメリカ委員会では、米国経済団体とも協力し、日米EPAの実現を働きかけている。その一環として、ACCJとともに両国経済界の関心事項や協力可能な分野等について検討を行い、共同声明として取りまとめた。

<共同声明概要>

■ 「戦略経済対話」の設置

現下の世界的な金融・経済危機の克服の必要性にかんがみ、両国政府の日米経済連携の強化に向けた一層の努力を求める。
その一環として、日米経済関係にとって重要な長期的・戦略的課題を取り上げる両国政府間の「戦略経済対話」を設置すべき。閣僚による定期的な会合の開催を通じ、両国の経済課題の戦略的優先順位を決定し、実務作業に方向性と推進力を与えつつ、政治的な支持を得ていく必要がある。

■ 積み上げ方式( Building Block )アプローチ

日米間の貿易投資を阻害し、両国の競争力を制限しているビジネス環境上の当面の課題解決に取り組み成果を上げていくことが、日米EPAをより積極的に追求することにつながる。改善を求める課題は次のとおり。

■ 「FTAプラス」としての包括的協定

日米EPAは「FTAプラス」の協定として、「実質的にすべての貿易およびすべてのサービス分野」を含むものとする。関税に加え、法規制とその透明性、物流、基準・認証、商法、投資等の非関税措置が対象になる。このような日米EPAは、今後の広域地域協定のモデルともなり、多国間交渉の進展にもはずみをつけるものとなる。

■ APECにおける日米のリーダーシップ

2010、11年に日米両国がAPECの議長国を務める機会を利用し、日米両国政府が環太平洋経済連携推進に主導的役割を果たすべき。アジア太平洋地域における新たな貿易・経済枠組みの構築を主導することは、アジア、世界における日米両国の競争力向上に資する。こうした取り組みを通じWTOの多角的交渉にも寄与すべくドーハラウンドを引き続き支持するとともに、早期妥結を求める。

<オバマ政権の外交・通商政策(信田教授説明要旨)>

■ 現在の日米関係

現在の日米関係は最良の時である。ブッシュ前大統領と小泉元首相とのような個人的関係ではなく、オバマ政権との間では、日本政府が米国政府に対して実質的な影響力を有している。
背景には日本の役割の拡大があり、オバマ政権は日本重視の姿勢を示している。クリントン国務長官の最初の外遊先は日本であり、今年2月の麻生首相の訪米では、外国首脳として初めてホワイトハウスに招かれた。首脳間で、地球環境問題をはじめさまざまな課題に協調して対処することが確認されており、評価できる。

■ オバマ政権の通商政策

民主党政権として保護主義化が懸念されたが、オバマ政権も自由貿易推進の姿勢を示している。今年2月に成立した景気対策法にはバイアメリカン条項が盛り込まれたが、オバマ大統領により、国際ルールと矛盾しないかたちで運用されることが担保された。
また、自由貿易推進を景気回復策の一環とする認識も強まっている。オバマ政権は、署名済みのFTAの早期議会承認(対パナマ、コロンビア、韓国)やWTOドーハラウンドの推進を重点課題と位置付けている。

■ 日米FTAの可能性

オバマ政権は一貫して「日本側に用意があれば日米FTAに対応する」との立場である。ただし、FTAを所管する上院財政委員会においては、当面、景気対策、金融改革、医療制度改革等、オバマ政権の最重要課題が審議される。また、FTAの中でもまずは署名済み協定の承認や、TPP(環太平洋戦略経済パートナーシップ=ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールによる協定。米国、豪州、ペルーが参加し交渉)の追求が優先される。

【国際経済本部】
Copyright © Nippon Keidanren