日本経団連事業サービス社内広報センターは、このほど「社内広報の定義とその具体的活動」ならびに「社内広報総合評価診断チェックシート調査」の結果を発表した。同センター内に設置された社内広報総合評価委員会では、企業と社会(ステークホルダー=利害関係者)との双方向コミュニケーション活動は重要であり、従業員は重要なステークホルダーの一部であるという認識の下に、「社内広報の定義とその具体的活動」をまとめた。その概念規定を基準にして110の評価(チェック)項目からなる「社内広報総合評価診断チェックシート」を作成。その目的は会員各社の社内広報活動がスムーズに機能しているかどうか、その強みや弱みを社内広報担当者や責任者に自己診断してもらうためである。
同調査は、チェックシートを配布した社内広報センター会員を対象に2008年1月から09年4月にかけて実施、62社から回答を得た。
それによると、「経営ビジョンの社内伝達やトップダウン型の企画内容には自信あり」「広聴活動は低調」「従業員の意識を鼓舞する特集企画は紙媒体がメイン」「イントラネットは迅速で安全な情報伝達手段として活用」などの諸点が浮き彫りになった。
「社内広報の定義とその具体的活動」と「チェックシート調査結果」の概要は以下のとおり。
社内広報総合評価委員会では、「広報」の中に存在する「社内広報」の定義について検討し、次のとおり規定した。
社内広報とは、「『企業』と『ステークホルダーとしての従業員』とのインターナルコミュニケーション活動および従業員同士のコミュニケーション活動である。企業と従業員の良好な関係を構築し、企業を『社会的存在意義』のあるものとするために、従業員の満足度を高めて理想的な組織風土を創造し、従業員の組織人・社会人・個人としての能力向上に寄与する活動である」。
その上で社内広報が取り扱うべき領域、つまりその具体的活動として、以下の11項目を取り扱わなければならないとした。
これら11項目は、社内広報活動を行うにあたって常に意識しなければならない。
62社から回答を得た「社内広報総合評価診断チェックシート」は、「1 社内広報を円滑に進めるための諸活動(社内広報全般)」「2‐1 紙媒体・社内広報の媒体を企画し、クオリティーを高める活動(編集方針・企画内容、編集技術など)」「2‐2 イントラネット・社内広報の媒体を企画し、クオリティーを高める活動(編集方針・企画内容、編集技術、運営体制など)」の三部から構成されている。
ここでは1の概要を紹介する。
「1 社内広報を円滑に進めるための諸活動」において、最も自己評価が高いチェック項目は「広報担当部門の責任者が社内広報活動に積極的で理解があるか」で、回答者の社内広報に対する自覚と責任感が感じられる。「経営トップと広報担当責任者が比較的近い距離にあり、トップの意向を理解しやすいか」「社内広報活動が企業理念・企業文化の共有の一助となるような情報を発信しているか」についても評価が高く、広報がトップ経営者のビジョンを社内に伝達し、組織風土形成に貢献していることがうかがえる。「担当者が能動的に社内情報の収集に努めているか」「社外広報と歩調を合わせて社内に発信し、従業員の理解を深めているか」についても評価が高く、社内広報担当者のフットワークの軽さが感じられる。「社内ジャーナリスト」としてスムーズな取材活動を行うには、広報部内はもちろんのこと、社内全体のネットワークが重要であることを裏付けている。
一方、「従業員の声や考えを十分に受信できているか」「社内情報を収集する仕組み(委員会、通信員制度)があり、活用されているか」などの広聴活動については評価が低い。ボトムアップのコミュニケーションツールとして、もっと社内の声を吸い上げていくような工夫をすべきだろう。
また、危機管理項目に関する「不祥事やマイナス情報について社内で共有する風土があるか」「危機が発生したときに、社内に迅速に情報を発信できる社内広報システムがあるか」については評価が低い。社内では「ステークホルダーとしての従業員」という認識がまだ不十分なために、事前のリスクマネジメントにおいて社内広報が後回しにされがちなのではないか。
また、「企業倫理、行動指針などを徹底するような企画を立てているか」や「コンプライアンスを徹底するような企画を立てているか」についても評価が低い。不祥事のない風通しのよい企業体質をめざして社員意識を統一するための社内広報活動については、まだ十分とはいえないようだ。
(詳細は社内広報センター発行の隔月刊「社内広報」09年6‐7月号に掲載)