日本経団連は15日、東京・大手町の経団連会館に内閣官房の河合潔参事官を招き、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」に関する説明会を開催した。
河合参事官の説明要旨は次のとおり。
犯罪件数は1996年から増加を続け、2002年に約285万件のピークに達した。また検挙率は01年に20%を切り、治安の悪化が深刻化した。これを受け03年9月に全閣僚をメンバーとする「犯罪対策閣僚会議」を設置し、同年12月に「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を策定した。国・地方による「同行動計画」の実践により、検挙率は06年以降30%台に回復、08年の犯罪件数は約182万件まで減少した。しかし、昭和20年代から50年代前半まで、犯罪件数は120〜160万件で推移しており、犯罪件数が十分に下がったわけではない。
加えて、現在の経済情勢は治安の悪化につながる可能性がある。完全失業者数と強盗、ひったくり、車上ねらいの件数には相関がある上、近年の月平均実収入の停滞により万引き、公務執行妨害、暴行の件数は増加傾向にある。このため、引き続き犯罪の未然防止に向けた対策に取り組む必要がある。
こうした中、「犯罪対策閣僚会議」は、今後5年間を目途に犯罪をさらに減少させ、国民の治安に対する不安感を解消し、真の治安再生を実現することを目標として、(1)身近な犯罪に強い社会の構築(2)犯罪者を生まない社会の構築(3)国際化への対応(4)犯罪組織等反社会的勢力への対策(5)安全なサイバー空間の構築(6)テロの脅威等への対処(7)治安再生のための基盤整備――を柱とする「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」を、昨年末に取りまとめ公表した。
経済界には、かねて犯罪抑止活動に協力いただいており感謝している。行動計画の中には、企業の活動と関係の深い項目も盛り込んでいるが、コストもかかるため、網羅的に実行してほしいとは言えない。できる範囲で持続的に取り組んでいただくとともに、今後、企業ならではの取り組みとしてさらに何ができるのか検討していただきたい。特に反社会的勢力の排除のためには、警察による取り締まりだけではなく、官民を挙げた取り組みをさらに積極的に推進していくことが重要であり、経済界にも引き続きの協力をお願いしたい。