日本経団連タイムス No.2959 (2009年7月16日)

地球温暖化に関するシンポジウム開催

−民生部門の省エネルギーへの取り組みについて意見交換


日本経団連は3日、東京・大手町の経団連会館でWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)との共催で、地球温暖化問題に関するシンポジウム「民生部門における省エネルギーの取組み」を開催した。当日は会員企業等から350名余りが参加した。

同シンポジウムでは、ビヨン・スティグソンWBCSD事務総長および村上周三建築研究所理事長の基調講演ならびに、WBCSDの建物の省エネプロジェクト( EEB = Energy Efficiency in Buildings )関係者、合場直人三菱地所執行役員らによるパネルディスカッションが行われた。

冒頭、スティグソン事務総長は、今後も人口増加や発展途上国の生活水準の向上により、建物の床面積の増加が予想される中、建物のエネルギー効率の向上が重要な課題となっていると述べた上で、産業界は技術、サービス、商品等を通じてこの問題の解決に貢献できることを強調した。

続いて、村上氏は、建築市場においては、所有者・利用者による省エネ建築の選択、設計者・施工者による高品質・低価格の省エネ建築の提供、投資家・ディベロッパーによる省エネ建築への投資、という好循環サイクルを実現し、市場を変革することが重要であると指摘。そのために、規制、支援・誘導、啓発・情報発信の3つの方策と、制度・技術・ライフスタイルのイノベーションを連動させた総合的な取り組みが必要であると述べた。

後半のパネルディスカッションでは、アルショットEEBプロジェクト共同議長から、EEBプロジェクトの結果についての報告が行われた。アルショット氏は、日本のオフィスのエネルギー消費は、建物単体で51%の削減ポテンシャルがあると説明。一方で、企業や個人が実際に削減に向けた取り組みを行う上では、コストや知識の欠如等が障壁となっていると指摘。市場の力単体では建築市場を変革することは難しく、企業、個人、政府の迅速かつ実質的な行動が必要であると強調した。

この点、村上氏は、「確かに市場に委ねるだけでは不十分であるが、市場の活動を必要以上に規制することは避けるべきであり、市場の活力を維持しつつ、建築分野の市場変革を進めるべきである」と述べた。

合場氏からは、小規模ビルに対する削減ノウハウの提供が重要であり、日本ビルヂング協会連合会では100の対策メニューを例示していると紹介があった。

最後に、桝本晃章環境安全委員会アドバイザーから閉会のあいさつがあり、「本日の議論を通じて、建物のCO2排出削減は課題であると同時に実現可能であることが明らかになった。今後、建物の省エネが促進することを期待する」と締めくくった。

【環境本部】
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