日本経団連タイムス No.2959 (2009年7月16日)

「わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言」を発表

−輸出管理政策見直しなど求める


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は14日、「わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言」を発表した。同提言は、今年末に政府が新たな「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」を策定することに対して、経済界の考えを取りまとめたものである。概要は次のとおり。

■ 防衛産業の現状と環境変化

わが国では、特定の大企業の一部門とその下請けである中小企業が防衛技術・生産基盤を支えており、産業基盤は不十分である。また、防衛関係費の減少や主要装備品の新規契約額の漸減により、一部企業は防衛事業から撤退している。

近年、先進諸国は防衛技術の流出にセンシティブになり、外国から最新の装備品を調達するのは困難となった。また、昨年秋からの世界経済危機により、民生部門に頼る防衛事業の運営が難しくなった。

■ 防衛技術・生産基盤の意義

「防衛技術・生産基盤の意義」としては、(1)高度な技術力による抑止力と自律性の確保(2)迅速な調達・運用支援と装備品の能力向上(3)国土・国情にあった装備品の開発・生産(4)技術・経済波及効果(5)輸入やライセンス生産におけるバーゲニングパワーの確保――の5つが掲げられる。

■ 求められる防衛産業政策

まず、安全保障にとって不可欠な装備品を取得するために適正な規模の予算を確保し、次の3つの重要分野に集中投資すべきである。

  1. (1)要素技術をシステムにまとめるシステムインテグレーション能力の向上等。戦闘機、哨戒機、ヘリコプター等が該当。
  2. (2)国土・国情や専守防衛の基本方針に合致した運用を行う分野。潜水艦、戦車、飛行艇等が該当。
  3. (3)技術の国際的優位性を確保する分野。航空機やセンサー等が該当。

次に、武器輸出三原則等により、武器および武器技術の輸出が一部の例外を除き全面的に禁止されてきたが、海外からのニーズは多岐にわたる。そこで、内容や最終の仕向け先、用途を総合的に勘案し、製品や技術の提供がわが国や国際社会の安全保障と平和維持に対してどのように貢献するかを判断基準として、一律の禁止でなく個々のケースについて検討すべきである。こうした観点から、平和国家の基本理念を踏まえつつ、武器輸出三原則等を見直すべきであり、まず、(1)欧米諸国等との国際共同研究開発(2)ライセンス提供国が装備品を取得するニーズへの対応(3)装備品の開発における輸入品の調達に関する技術提供――の3つの事例を検討する必要がある。

さらに、新たな分野として早期警戒衛星や偵察衛星の開発・整備など、防衛における宇宙開発利用の推進を求める。

最後に、政府は、安全保障に係る基本方針を明確に示した上で、長期的観点に立ったこれらの防衛産業政策の策定を防衛大綱に盛り込み、実行すべきである。

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日本経団連としては今後、政府・与党など関係方面に対し、提言の実現を働きかける予定である。

【産業技術本部】
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