日本経団連タイムス No.2954 (2009年6月11日)

職場での心理的負荷評価表の見直し等、労働安全衛生部会で厚労省担当官が講演


日本経団連は5月25日、東京・大手町の経団連会館で、労働法規委員会労働安全衛生部会(清川浩男部会長)を4つのワーキング・グループと合同で開催した。

当日は、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の一部が改正されたことに伴い、新宅友穂・厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長が、「職場における心理的負荷評価表の見直し等」について講演を行った。

新宅課長は冒頭、精神障害等に係る労災補償状況について説明。請求件数が2003年度の447件から07年度の952件と、毎年著しく増加していると指摘し、労働基準監督署としては請求される事案について的確に判断していきたいとした。また、労働環境の急激な変化等により、現行の職場における心理的負荷評価表による具体的出来事への当てはめが困難な事案が少なからず見受けられたため、1999年に設けた精神障害等に係る判断指針を約10年ぶりに見直し、今年度から新基準での認定が開始されたと説明した。なお、見直しにあたっては、08年12月から3月19日にわたり開催した3回の検討会を経て、3月27日に報告書を取りまとめている。

続いて、新宅課長は改正内容について説明。判断指針の別表である「職場における心理的負荷評価表」の具体的出来事について、新たに12項目を追加し、計43項目とするとともに、現行の出来事についても、心理的負荷をより適切に評価するために7項目について必要な修正を行ったとした。具体的には、職場におけるひどい嫌がらせ等による心理的負荷を反映させるために、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」とする項目などが追加されたとした。また、先般、上司が部下の嫌がらせによって自殺した件について、労災不認定処分を取り消す判決がなされたが、「部下とのトラブルがあった」とする項目を、従来にはあまりなかった新たな心理的負荷が生じているとして、平均的な心理的負荷の強度レベルを引き上げるなどの修正を行ったと述べた。

さらに、職場における心理的負荷評価表については、職場環境の変化により、労働者が受けるストレス度も変化することが考えられることから、ストレス評価に関する調査研究を継続して実施することが必要であることを今後の課題として挙げた。

最後に、今回の改正は、労災認定の判断基準を緩和したり、また厳格にしたりしたものではなく、あくまで実際の出来事について適切に判断できるようにするための改正であることを強調して、講演を締めくくった。

部会ではこのほか、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂を受け、概要、改訂の経緯、今後の動きについて、柳川行雄・中央労働災害防止協会健康確保推進部メンタルヘルス推進センター所長の講演を聴取した。その後、6月3日から開催されている第98回ILO総会の議題のひとつである「HIV/AIDSと仕事の世界」への対応などについて事務局から報告を受け、了承した。

【労働法制本部】
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