スピーチするプーチン首相 |
日本経団連(御手洗冨士夫会長)の日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は12日、都内で、ロシア産業家企業家連盟(RSPP、アレクサンドル・ショーヒン会長・対日経済関係発展国家委員会委員長)との間で、ロシア連邦のプーチン首相の臨席を得て、「日本ロシア経済フォーラム」を開催した。フォーラムには、日本政府来賓として経済産業省の高市早苗副大臣、国土交通省の加納時男副大臣、外務省の西村康稔大臣政務官が出席したほか、日本側から約270名、ロシア側から約180名の政府・経済界関係者が参加した。
開会式であいさつした岡委員長は、最近のわが国経済界のロシアビジネスに対する関心が幅広い業種で高まっており、その結果、貿易、投資関係が急速に拡大していると指摘した。また、ロシアの輸送インフラ整備や資源エネルギー開発をはじめとする大型の開発計画を注視しており、多くの日本企業にとってロシアは、世界戦略上重要であることを強調した。
フォーラムでは、最近の両国の経済関係の拡大と多様化を背景に、(1)エネルギー(2)資源開発(3)輸送インフラ整備(4)輸送機器等の製造(5)金融――の各分野での協力について双方から報告を行った。また、ロシア側は、イノベーション推進に向けた原子力やIT分野における関係強化に強い意欲を示した。
岡委員長はフォーラムの総括で、ロシアの資源開発、輸送インフラ整備、各種製造業などの分野における大きな発展可能性を改めて指摘し、日本の技術力や資本力を活用した両国の協力に取り組みたいとした。特に、極東シベリア地域の発展について、2012年にウラジオストクで開催される予定のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に触れ、日本企業による各種のインフラ整備事業への参画の可能性について言及した。
フォーラムの終盤から出席したプーチン首相はスピーチで、まず、最近の二国間の経済交流が順調に進展しているとの認識を示すとともに、近年の日ロ貿易と日本企業の対ロシア投資に言及し、両国の経済交流が質量ともに拡大していることを高く評価した。
一方、世界的な経済危機の中、ロシアも資源需要の減少や価格下落の影響を受けていることに触れ、今年の主要経済指標は昨年と比較して厳しい数字になるとした。しかしながら、ロシア政府は総額3兆ルーブル、約900億ドルに上る経済対策を実施するなど、適切に対応しており、ロシアにはこの危機を克服する能力が備わっていると説明した。
また、首相は、ロシアが現在、原料輸出型経済からイノベーション型経済への転換に取り組んでいることに言及し、エネルギー開発関連のインフラ整備、省エネルギー、ナノテクノロジー、農・林業などの有望分野で、日本の高度な技術力を活用した協力に強い関心を示した。
フォーラム終了後、日本経団連の御手洗会長主催によるプーチン首相歓迎昼食会が開催され、両国の経済界の代表は、二国間経済交流の展望について、率直な意見交換を行った。
大統領時代の05年11月以来、約3年半ぶりに訪日したプーチン首相とわが国経済界との一連の行事を通じて、両国の相互理解が一層深まり、今後の経済関係の発展につながることが期待される。