日本経団連の労働法規委員会(三浦惺委員長)が22日、都内で会合を開催した。今回の会合では、中央労働委員会会長の菅野和夫氏を招き、同氏から「今後の労働法制のあり方について〜有期労働契約の現状と課題」と題し、講演が行われた。
菅野氏は、近年の労働政策の流れとして、(1)雇用社会の構造変化(女性の参加、高齢者の増加、働き方の多様化、少子化)への対応(2)労働市場の機能を高めることを基本とした規制改革(3)市場主義から生じた弊害を補正する社会政策――の3つを挙げ、特に現在は、世界同時不況下において、「雇用維持・失業者保護のための積極的雇用政策」「非正規労働者のための公平性の確保」「少子化への対応」を中心とする労働政策が進められていることについて説明。
その上で、今後の労働政策は、市場主義とその補正の間で揺れつつも、雇用問題の重要性が再認識されたことから、今後も雇用重視の政策が続いていく見通しだが、2007年12月21日に労働政策審議会に建議された「今後の雇用労働政策の基本的考え方について」で示されたとおり、「公正な働き方の確保、雇用・職業の安定、多様な働き方の尊重」を基本とし続けるべきであると述べた。また、労働政策の形成手続きについては、公労使三者構成の審議会の審議を経ることが維持されるべきであると述べた。
次に菅野氏は、有期労働契約に関し、(1)有期労働契約の機能(2)関連する法規制(3)「2003年の労働基準法改正の際、同法第14条の施行後3年を経過した後、見直しを行うとした規定(改正法附則3条)」および「有期労働契約については『今回講ずることとなる施策以外の事項についても、引き続き検討することが適当』との意見が盛り込まれた労働政策審議会労働条件分科会答申(06年12月27日)」――を受け、厚生労働省に発足した「有期労働契約法制研究会」(09年2月)等について説明。
その上で、有期労働契約に関する立法上の論点として、(1)労働基準法第14条の見直し(労働契約期間の上限の見直し、「契約締結・更新・雇止めの基準」のルール化等)(2)労働契約法の見直し(第17条の見直しや同条以外の規定の追加等)(3)有期契約の利用理由の制限や更新回数・期間の制限に関する見直しと均等待遇への対応――などを挙げ、立法にあたっては、「労働市場を硬直化する規制強化は望ましくない」「判例法理で確立しているルールは明文化すべき」「契約期間の有無、更新の有無と基準などは労働契約上明確化した方が良い」「処遇上の公正さは避けて通れない課題」等の意見を述べた。
菅野氏の講演の後、同委員会が所管する部会(労働安全衛生部会、労働法企画部会、労務管理問題検討部会)の09年度検討テーマや09年度規制改革要望(内閣府が6月=あじさい月間、11月=もみじ月間に集中して受け付け)の要望内容に関する審議が行われた。