日本経団連(御手洗冨士夫会長)は、各地域に活力ある広域経済圏を確立し、わが国全体の豊かさを向上させる観点から、2015年を目途に道州制を導入することを求めている。道州制の下では、各地域が自らの責任で地域づくりを進めることが期待されるが、既に各地域の将来像に関する議論や、自立した地域づくりに向けた具体的な取り組みが行われている。
九州では、「九州はひとつ」の理念の下、官民一体での発展をめざし、九州各県の知事と地元の経済団体の長からなる九州地域戦略会議が設置されている。同会議の道州制推進検討委員会では、道州制導入の効果などについて具体的な検討を行っており、08年10月に公表した「九州モデル」の答申では、道州制の下で医療、子育て環境、産業活性化策等がどのように変わるかを示すとともに、税収や財政支出のシミュレーションを提示している。
中国地方では、中国経済連合会が04年11月に「広域的な地方自治の実現に向けて」を公表し、道州制の下での税財政制度のあり方や、道州知事と道州議会の関係等についての考え方を示している。現在も、道州制が地方の活性化に直結するよう、調査と検討を進めている。
四国では、四国経済連合会が09年3月に「四国から見た道州制についての基本的な考え方」を公表し、四国四県からなる四国州の実現を求めている。また、同会が自治体および経済界を対象に実施したアンケートでは、道州制の導入に対して賛成する意見が6割を超えていることが示されている。
中部では、中部経済連合会がこれまでに5度にわたり提言を公表している。09年3月には、「中部州の姿」を公表し、各県が実施している施策を中部州が一元的に担うことで、ものづくりを中心とした産業振興を図ることができるとしている。また、中部州の姿としては、「長野・岐阜・静岡・愛知・三重の5県」が適当であると指摘している。
東北では、東北経済連合会が07年3月に「道州制に関する提言」を公表し、道州制により東北地域の一体感が強まれば、将来の北東アジアの交流深化や産業集積の拡充も可能になるとしている。
このように道州制に関する提言活動が行われる一方で、広域的な行政課題に対応するための取り組みも進められている。
関西では、2府8県4政令市と経済団体が官民一体で関西広域機構(通称KU)を設立し、広域連携の強化と分権の推進に取り組んでいる。KUでは、09年中に複数の府県と市が参加する広域連合を設置し、広域的に防災や観光・文化振興、産業振興等に取り組むことで、住民生活の向上に寄与することをめざしている。
関東でも、首都圏では東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県知事および4政令市長からなる8都県市首脳会議において、合同の防災訓練や地球温暖化防止一斉行動などを行っている。
一方、北海道では「道州制特区推進法」により、全国に先駆けた道州制のモデルづくりが進められている。道州制特区は、北海道からの提案に基づき、国から北海道に対して権限移譲を行う仕組みであり、北海道は過去3度にわたり21項目の提案を行っている。しかし、中央省庁の抵抗もあり、満足のいく成果は上げられていない。
こうした状況も勘案し、日本経団連では、関西が設置を予定している広域連合も特区法の対象とすること、権限移譲のみならず、税財源の移譲も実現させることなどが重要であると訴えている。
道州制の導入に向け、日本経団連ではこうした各地域の取り組みを後押しすると同時に、政府や自民党に対しては、道州制の導入に向けた「基本法」の制定を求めていく。