日本経団連タイムス No.2948 (2009年4月23日)

日本の科学技術政策の現状と課題で説明聴き意見を交換

−産業技術委員会


日本経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で産業技術委員会(榊原定征委員長、中鉢良治共同委員長)を開催し、総合科学技術会議(総科技)の奥村直樹議員から、日本の科学技術政策の現状と課題について説明を聴き、意見交換を行った。

まず、奥村氏は、日本の科学技術政策の推進体制について、総科技の司令塔としての権限が、府省横断的な政策形成や予算策定等の面で、米国と比して限定的である現状を紹介した。また、日本の政府研究開発投資について、第3期科学技術基本計画(2006〜2010年度)での総額目標25兆円に対し、09年度までの4年間の予算総額が約16兆円にとどまっており、目標達成が厳しい状況にあることを説明した。さらに、国際競争力の点についても、IMD(国際経営開発研究所)の08年の国際競争力調査では日本の競争力の評価は22位と中国や台湾などより低く、科学技術インフラに比べ教育インフラが課題となっている点を指摘するとともに、個別研究分野についても、今後5年間で国際競争力が低下する可能性があるとの懸念を示した。

続いて、科学技術政策の今後の課題として、(1)研究開発成果を日本が抱える政策課題の克服や内需拡大に活かすべく、社会システム改革を一層推進すること(2)地球温暖化対策をはじめとする地球規模課題へ挑戦し、学術的研究にとらわれず課題解決型の研究を強化すること(3)学術・産業の分野で国際的に活躍する研究者・技術者の育成と、産学官連携を抜本的に強化すること(4)科学技術の成果・課題の「見える化」を進め、科学技術に対する国民の理解を増進するとともに、各機関の主体的な改革を促進すること――が必要であると提起した。その上で、日本経団連との連携をさらに強化したいとの意向を示した。

説明後に行われた意見交換では、榊原委員長が、奥村氏の課題提起に同意するとした上で、(1)科学技術予算の増額(2)国家的課題解決に向けた府省一体となった研究開発の推進(3)総科技の司令塔機能の強化(4)国際的な人材の育成・確保――が重要であることを強調し、今後、産業界としての意見発信を強化していきたいとの姿勢を示した。また、委員からも、評価システムの見直しによる競争原理の導入、革新的なイノベーション創出に向けた政府調達等による需要喚起、産学官の政策対話強化の重要性等が指摘された。

今後、産業技術委員会では、第4期科学技術基本計画の策定をにらみ、今年11月頃を目途に、わが国の科学技術・イノベーション政策の中期的なあり方についての産業界の意見を取りまとめていく方針としている。

【産業第二本部開発担当】
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