ロンドンにおけるG20金融サミット(4月2日)を控えて、英国政府および英国産業連盟(CBI)は3月18日、G20ビジネス・サミットをロンドンで開催した。英国政府からは、ブラウン首相、マンデルソン・ビジネス・企業・規制改革相らが出席、経済団体側はCBIのブロートン会長はじめ20カ国・1地域(欧州)の代表が参加した。日本経団連からは、本田敬吉OECD諮問委員会委員長が出席した。
当日は、まず経済団体代表全員から、広範にわたる関心事項が提示された。本田委員長は、主催者があらかじめ設定したテーマに沿って、G20金融サミットでは、WTOドーハラウンドの早期妥結の必要性を強調するとともに、それまでの間、実行関税率等を現行水準で据え置くことに合意するよう求めた。また、途上国向けの資金フローに関して、日本のODAを含む公的な資金を呼び水として民間資金の流れを引き寄せていく必要性を指摘した。
続いて行われたブラウン首相との懇談では、冒頭、同首相から、1930年代に開催されたロンドン会議は失敗し大不況につながったが、来るG20金融サミットは何としてでも成功させなければならないとの発言があった。
また、金利の引き下げ、銀行への資金注入、大規模な景気刺激策など既に講じられている対策に加え、G20サミットでは、次の3点について決定される必要があるとした。第1は、WTOドーハラウンドの推進、WTO協定の順守状況の監視、保護主義的措置の回避・撤回、貿易金融の拡充。第2は、金融システムの自力建て直しが不可能な諸国に対するIMF、世界銀行等による支援。第3は、金融システムの規制・監督当局間の一層の連携、早期警戒体制の確立等である。
これに対し、ブロートンCBI会長が各経済団体の意見を、(1)WTOドーハラウンドの早期妥結が必要。それまでの間、実行関税率を現状で据え置くとの約束が必要。また、貿易のみならず、投資、資本、人の移動に係る保護主義的措置の監視が必要。ロシアのWTO早期加盟が必要(2)貿易金融に関する二国間・多国間の協力が必要。自己資本比率規制と信用収縮との関係について検証が必要。国際機関の財源基盤の拡充と運営方法等の改革が必要(3)すべての金融市場が規制の下に置かれることが必要。ただし、規制の強化ではなく、規制の質的向上をめざすべき。昨年11月のG20金融サミットで合意した行動計画の進捗状況のチェックが必要。中期的措置についても工程表を作成すべき――の3点に集約し説明した。
これを受け、ブラウン首相からは、(1)WTOドーハラウンドが妥結できるかどうかは政治的意志の問題。保護主義的措置の監視にあたって各国は協力すべき。金融面の保護主義に対しては国際的な合意が必要。貿易金融については、世銀、輸出信用機関および民間部門の協力が必要(2)各国の対策に共通する目的は、不良資産の明確化・オフバランス化と信用機能の回復。金融安定化フォーラム(FSF)の役割の拡充など国際金融面の協力の必要性についても合意あり。国境を越える監督は、国際的な監督当局間グループを通じて実施(3)既に大規模な経済刺激策を採っている国があるが、各国間の協力が必要(4)国際金融機関については、設立時と今日とでは役割・機能が異なることから見直しが必要――との発言があった。
なお、会合後、「WTOドーハラウンドの妥結」「貿易金融の拡充」「反保護主義の追求」の3点について、G20金融サミットの決定を求めるマンデルソン・ビジネス・企業・規制改革相とブロートンCBI会長の共同声明が公表された。