日本経団連タイムス No.2945 (2009年4月2日)

日本はウクライナ近代化のための戦略的パートナー

−ティモシェンコ・ウクライナ首相と懇談



ティモシェンコ首相(左)と握手する岡委員長

日本経団連の日本NIS経済委員会(岡素之委員長)は3月25日、都内で、ウクライナのユーリヤ・ティモシェンコ首相との懇談会を開催、日本側から同委員会の幹部が出席した。ティモシェンコ首相の発言要旨は次のとおり。

■ 日本との戦略的関係の構築に期待

旧ソ連から独立後17年が経ち、わが国ではエネルギー、農業、公共部門等における設備の近代化の必要性が高まっている。ウクライナは、これら近代化のパートナーとして日本を選んだ。日本はこれまでたぐいまれな経済発展を遂げ、優れた技術力を持つようになった。わが国はこのような日本との戦略的関係の構築を望んでいる。

■ 環境分野における協力を促進

昨年7月、日本政府との間で、京都議定書の下での共同実施(JI)およびグリーン投資スキーム(GIS)に関する覚書に署名し、3月18日には、国際排出量取引契約を締結した。これにより環境分野における日本との共同事業の可能性が拡大した。この取引に基づく温室効果ガス削減プロジェクト等の環境対策活動は、すべて日本企業と進める。

こうしたプロジェクトが計画されている5つの分野を紹介する。最優先の課題はガス輸送システムの近代化である。先日わが国では、圧力制御装置の改修、輸送時のガス漏れ対策、制御用モニターの設置等を含む、ガス輸送パイプラインの近代化を進めることが決定した。中央アジア諸国等の天然ガス産出国にパイプラインを延伸することにより、輸送能力を5割増強できることになる。これに対してロシアは複雑な思いを抱いているようだが、われわれは確実に計画を遂行していく。

第2は火力発電所の近代化である。第3は自国で産出されたウランの利用、独自の核燃料サイクルの確立を含む安全な原子力発電の推進である。第4は上水道や給湯システム等の公共設備への省エネ技術の導入である。第5は製鉄所や化学工場の近代化である。この点については、日本企業がプロジェクトの参加を表明しており、今後のモデルとなることを期待している。わが国としても融資資金への政府保証を検討している。そのほかにも、浄水システム整備、炭鉱に蓄積するメタンガスの活用等、日本との協力の可能性がある分野は幅広い。

また、今回、日本との間で排出量取引が行われることになったが、その規模は小さい。わが国はさらに大量の余剰枠を有しており、今後も日本との取引を継続したい。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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