日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は12日、第62回シンポジウム「道州制〜基本設計図を描く」を東京・大手町の経団連会館で開催し、わが国における道州制のあり方について広く議論を喚起した。シンポジウムでは、宮原理事長の主催者代表あいさつの後、同研究所の林宜嗣研究主幹(関西学院大学教授)による研究報告と、パネルディスカッションが行われた。当日は、日本経団連の会員企業・団体などを中心に約120名が参加し、道州制論議の最前線で活躍する講師・パネリストの説明に熱心に耳を傾けていた。なお、今回のシンポジウムの報告書は、近日中に、21世紀政策研究所のホームページ(URL=http://www.21ppi.org/)でも公開する予定である。
冒頭あいさつで宮原理事長は、「『地域経済の活性化』と『行政効率化』に資する道州制という観点から、精力的に検討を行ってきた。また、今回取りまとめた報告書は、道州ごとの経済効果や財政収支予測などのように、『具体性』と『定量性』を特徴にしており、本シンポジウムが道州制の意義を理解する一助になることを期待する」と強調した。
その後、林研究主幹が、「地域経済圏の確立に向けた道州制の導入と行政改革〜道州制と税財政制度」と題して報告を行った。林研究主幹は、道州制の設計に関わる基本的事項や税財政制度等について、各種の興味深いデータと独自のシミュレーション分析に基づいて説明した。具体的には、広域化による行政効率の改善と、分権による社会資本の効率的・重点的整備で最大5兆7000億円の効率化効果が道州制を導入することで得られるとともに、2035年時点での財源不足額を道州制が導入されなかった場合より約6割減らせるとする試算も示した。その上で、「各地域で多様な道州制の設計図があっても良く、現状の一体性だけで地域区分を考える必要はない」と指摘した。
パネルディスカッションは、「魅力と活力ある国と地方圏の形成を目指して〜どうする基本設計」というテーマで行われた。林研究主幹がモデレーターを務め、パネリストとして、青山彰久・読売新聞東京本社編集委員、高林喜久生・関西学院大学教授、西川雅史・青山学院大学准教授が参加し、(1)国・地方の現状と課題(2)道州制の意義・目的(3)道州制実現に向けての検討課題――を中心に活発な議論が展開された。この中で青山氏は、道州制導入の目的を明確にした上で、立法権・上書き権の地方移譲と地域の広域連携による仕事を増やすことが、道州制進展にとって重要であると指摘した。高林教授は、現状はグローバル化の負の側面が強く出ているとした上で、基本的には地域の問題は地域で解決することが望ましいことを、また西川准教授は道州制が課題を解決するのではなく、そうなるように制度を設計することの重要性をそれぞれ強調した。