日本経団連では1997年から、廃棄物対策に係る「環境自主行動計画」を策定し、産業界の自主的な取り組みを推進してきた結果、産業廃棄物最終処分量を90年度実績の8割強削減するなど、大きな成果を挙げてきた。
近年における産業界の取り組みは、単に廃棄物対策にとどまらず、循環型社会形成に向けて、3R(リデュース・リユース・リサイクル)など、幅広く取り組んでいることから、07年3月に、同計画を「廃棄物対策編」から「循環型社会形成編」に改編した。同時に、産業界全体の目標「2010年度の産業廃棄物最終処分量を90年度実績の75%減とする」を前倒し達成したことを踏まえ、同目標を「2010年度に1990年度実績の86%減とする」に上方修正した。また、業種ごとに、最終処分量削減以外の独自目標を設定した。
17日に公表した同計画の08年度フォローアップ調査結果によると、参加40業種のうち、産業廃棄物を排出している主要31業種の07年度の産業廃棄物最終処分量実績は862万トンであった。これは、基準年としている90年度実績の約5860万トンと比較すると、85.3%の削減となった。ここ数年における最終処分量の削減ペースは、同計画開始当初に比べて明らかに緩やかになってきて、今年度は前年比で横ばいとなった。02年度から07年度は景気拡大局面にあったにもかかわらず、最終処分量が減少傾向にあったことは、事業者による努力の成果といえるが、最終処分量の削減余地は確実に限定的になっている。
業種別独自目標については、今年度、目標値を見直した業種もあり、現在38業種が掲げている。
アジア諸国をはじめとした急速な経済発展等を背景に、08年夏までは、資源価格の高騰が著しかったが、08年秋ごろから世界の経済情勢は急速に悪化し、現在わが国も極めて深刻な景気低迷に陥っている。しかし、中長期的にみれば、今後、資源・エネルギーをめぐる需給は逼迫することが予想される。したがって、資源小国であるわが国は引き続き省資源・省エネルギー、さらには資源の循環的利用に注力する必要がある。今後、従来型の廃棄物処分場の逼迫問題や廃棄物の適正処理の必要性といった観点にとどまることなく、わが国資源政策の観点からも、循環型社会形成に向けた取り組みの推進が求められる。
このような認識の下、産業界は引き続き、各種法令の順守や廃棄物の適正処理の確保はもちろんのこと、各業種の特性・実情等に即しながら、環境技術開発や環境配慮設計、産業間連携の推進など、民間の創意工夫を最大限に発揮しながら自主的かつ積極的に3Rの推進に努めていく。
産業廃棄物最終処分量については、90年度比で既に8割強の大幅削減を実現しており、現行の環境技術・法制度の下で、これ以上の削減が限界に近づいている業種も多い。また、08年度初めまで続いた生産量増加に加え、戦後建てられた建築物の建て替え需要の増加や石綿含有廃棄物の処理、天然鉱物の品位低下、環境規制の強化等、産業廃棄物排出量の増加要因も想定されることから、今後の産業廃棄物最終処分量の大幅な削減は難しい状況にある。
日本経団連としては、「経済情勢等の変化にかかわらず、産業廃棄物最終処分量を増加に転じさせない」との決意に基づき、関係業界のより一層の努力をお願いするとともに、廃棄物処理法の見直しなど政府に対する環境整備を働きかけるなど、当面、産業界全体の第二次目標の実現に向けて取り組んでいく。