日本経団連は17日、知的財産委員会(野間口有委員長、足立直樹共同委員長)と産業問題委員会(原良也共同委員長、西田厚聰共同委員長)が共同で取りまとめた「『知的財産推進計画2009』の策定に向けて」を公表した。
同提言は、政府の知的財産戦略本部(本部長=麻生太郎総理大臣)において検討が行われている「知的財産推進計画」に向けて、特許やコンテンツなど知財分野の問題に対する産業界の考え方を示すものである。
近年、グローバル化の進展やイノベーションプロセスの変化など、企業経営と知財をめぐる環境は大きく変化している。わが国では、これまで知財権の強化によって産業競争力の向上を図る「プロパテント政策」が展開されてきたが、今後は、イノベーションの創出や健全な競争を促進する観点から、“競争”と“協調”のバランスのとれた「プロイノベーション政策」へと深化を図っていくことが必要である。
プロイノベーション政策に立脚した知財制度には、(1)知財の適切な活用による公正な競争の担保(2)企業の多様な事業活動を支える柔軟性の確保(3)国際的な制度調和への配慮――の3つの理念が求められる。知財制度の見直しに関する主な提言は次のとおり。
世界特許制度の早期実現に向けて、各国特許庁間のワークシェアリングを加速すべき。また、日欧が連携し、制度的に調和した先願主義への統一のため、米国の特許法改正に向けた継続的な働きかけを行っていくべき。
わが国特有の制度である職務発明制度(特許法第35条)について、特許を受ける権利の法人帰属化など、制度の見直しに向けた検討を行うべき。
デジタル・ネットワーク化の進展による著作物等の創作、流通、利用の形態の変化に対応するため、現行著作権法を基礎としつつ、著作物の産業的な利用を促進する制度と、インターネット上の自由な創作を促進する制度を新たに導入し、複線型の著作権法制を整備すべき。
裁判所で特許の有効性が争われた場合、特許無効の判断が下されるケースが多くなっており、企業の事業活動への影響が懸念されている。特許の有効性や審査基準のあり方について、特許庁と裁判所が共通認識を形成するための取り組みを進めるべき。
国際標準化活動の強化に向けては、関係省庁間の連携が不可欠である。標準化人材の育成など、複数省庁で取り組んでいる内容を連携テーマとして定め、「国際標準化に関する各省庁連絡会」などでフォローアップする取り組みを推進すべき。
コンテンツ産業のグローバル化が進む中、世界中でわが国発のコンテンツへの関心および評価が年々高まっている。しかし、国内コンテンツ産業全体の市場規模は、約14兆円で世界第2位であるものの、伸び率は鈍化している。
こうした状況下、わが国コンテンツ産業のさらなる振興のためには、文化と産業を包括的にとらえる文化産業戦略という視点によって、継続的、分野横断的かつ省庁の枠を超えて、「コンテンツ立国」たるべき対策を講じていく必要がある。コンテンツ産業の振興に関する主な提言は次のとおり。
コンテンツの創造力を強化するため、コンテンツの開発や映画業界におけるデジタル環境の整備等の設備投資への税財政上の支援措置、資金調達の多様化に向けた政策金融機関によるコンテンツ製作者等への出融資の拡充、また、マルチコンテンツ・プロデューサーをはじめとする人材育成、さらには、コンテンツ統計の整備や客観的な技能要件に基づく検定制度の創設等による教育基盤の整備等を推進すべきである。
わが国コンテンツの海外展開を促進するため、JAPANコンテンツフェスティバルをさらに推進するとともに、JETRO、在外公館等におけるマーケティング機能の強化を通じて、コンテンツの国際展開を支援すべきである。また、コンテンツのマルチユースを促進するため、コンテンツ原版のデジタルアーカイブ化の取り組みを支援すべきである。