日本経団連タイムス No.2940 (2009年2月26日)

「技術系留学生の質・量両面の向上に関する報告書」を発表

−現状と今後の取り組み方針まとめる/産業技術委員会産学官連携推進部会


日本経団連の産業技術委員会産学官連携推進部会(西山徹部会長)は17日、「技術系留学生の質・量両面の向上に関する報告書」を発表した。報告書は、企業にとって留学生の採用・活用に積極的に取り組むことが、優秀な人材の確保や、人材の多様化による社内活性化、ひいては国際競争力の強化につながるとの認識の下、イノベーション創出の担い手となる技術系留学生を主な対象とし、留学生の質・量両面の向上に関する検討結果をまとめたものである。同報告書の概要は次のとおり。

■ 日本における留学生の現状

<留学フェーズ>

日本における留学生は、産学官それぞれの努力もあり、12万人にまで増えている。しかし、高等教育機関在学者数に占める留学生数は3%と、諸外国に比べて低い。また、技術系を専攻する留学生の割合も2割と少ない。

<就職フェーズ>

卒業後に日本で就職する留学生の割合は増加傾向にあり、企業も必要な人材は国籍不問で採用する傾向である。一方で、入社後のキャリアパスに関する情報が少ないなどの課題もある。

<活躍フェーズ>

日本で就職した留学生の中には、コミュニケーションやキャリアの面で課題を抱えている者もいる。留学生受け入れに積極的な企業であっても、採用者の定着・活用に向けて、試行錯誤しながら進めている状況である。

■ 課題解決への取り組み方針

<留学フェーズ>

政府では、「留学生30万人計画」を進めているが、決して数ありきの政策に陥ることなく、イノベーション創出の担い手にもかかわらず割合の少ない技術系留学生に重点を置き、質の伴った量の増加をめざすべきである。そのためには、特に技術系留学生を意識した、魅力的な教育カリキュラムの提供、奨学金の拡充、現地でのリクルート活動の強化などが必要である。また、卒業後の日本での就職を見据え、技術系であっても、在学中に一定レベルの日本語力を身に付けさせることも重視すべきである。

<就職フェーズ>

留学生の日本での就職をより促進するため、入社後のキャリアパスの明確化、優秀な人材の国籍不問での採用・登用、インターンシップの推進などにより、留学生の就職意欲を喚起することが必要である。

<活躍フェーズ>

採用した留学生の定着・活躍に向け、留学生社員の悩みや要望の把握、キャリア開発の支援や関連情報の発信などにより、留学生社員がより活躍しやすい職場環境の整備に努める必要がある。

■ 今後の取り組みについて

日本経団連では、留学生を含めた高度技術系人材の育成のあり方について引き続き検討を進め、今後取りまとめる予定の第4期科学技術基本計画策定に向けた提言にその成果を反映させていく方針である。

【産業第二本部技術担当】
Copyright © Nippon Keidanren