日本経団連は17日、「少子化対策についての提言」を取りまとめ、少子化対策を「国の最重要課題」として位置付けた上で、財政の重点的な投入を行い、緊急かつ抜本的な少子化対策を講じるよう求めている。
少子化対策をめぐっては、2009年度に政府の少子化対策の実施計画が改定時期を迎える一方、保育制度改革も審議途上にある。このような状況を踏まえ、少子化対策委員会(池田守男共同委員長、鈴木茂晴共同委員長)において対策の基本的なあり方について検討を進め、今後5年間の重点施策やスケジュール、必要とされる財政投入規模などを具体的に提示した。
提言ではまず、急激な少子・高齢化の進行による社会システムの弱体化などの深刻な影響を指摘している。さらに今後、少子化対策を進める上で、(1)少子化対策の具体的な政策目標として、国民の結婚・出産の希望がかなった場合の合計特殊出生率(1.75)を掲げ、今後の子育て環境整備の進捗状況を見る目安とすること(2)施策の達成度を確実に評価すること(3)効果の高い施策に重点的に財政投入すること――を基本的な方向とすべきとしている。
また、待機児童の解消を最優先課題とし、保育制度改革を進め、保育サービスの量的拡充や多様なニーズに対応したサービスの提供を実現するとともに、保育ママ制度や認定こども園制度など、柔軟かつ効率的な保育サービスを拡充すべきとしている。併せて、保育を支える多様な人材の育成・確保、保育サービスの提供に係る地域の裁量拡大、地方自治体の独自財源の確保、関係省庁の連携が必要と指摘している。
このような施策の財源としては、緊急かつ戦略的に公費を投入し、保育所をはじめとする保育サービスの拡充などを図るべきとしている。例えば、潜在需要も含めた待機児童の解消には、保育所などの施設整備で約1兆円、運営費として約7000億円の追加費用が必要であると試算している。また、将来的には、消費税の引き上げにより安定財源を確保し、子育て世代に対する経済的支援なども含め、少子化対策の拡充に充てるべきとしている。
さらに、企業自らの課題は、ワーク・ライフ・バランスのさらなる推進であるとし、厳しい経営環境にあるいまこそ、「将来への投資」との認識の下、各社の実情に応じた幅広い施策展開を行うよう求めている。さらに、教育を通じ若者に子育ての意義を伝えるとともに、子を慈しみ育てる文化を取り戻すことに国民一人ひとりが共感し、社会全体で子育てを温かく見守り支えていく雰囲気を醸成することが重要であると述べている。
日本経団連では、ワーク・ライフ・バランス施策に関する情報交換の場の設定など、各社の取り組みを支援するとともに、引き続き「家族の日」「家族の週間」といった国民運動の機会を活かし、子育てに優しい社会づくりに積極的に取り組むなど、少子化対策の展開に重要な役割を担うとの決意を明らかにしている。