日本経団連タイムス No.2940 (2009年2月26日)

提言「国民全体で支えあう持続可能な社会保障制度を目指して」取りまとめ

−社会保障制度改革推進に向けた基本的な視点や重要施策を提示


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は17日、提言「国民全体で支えあう持続可能な社会保障制度を目指して」を取りまとめ公表した。国民が生き生きとした暮らしができるような社会の実現には、社会保障制度の抜本的な改革が不可欠との認識の下、社会保障委員会(森田富治郎委員長、井手明彦共同委員長)において、医療・介護、年金、少子化それぞれの改革の方向性を含め、改革に向けた重要施策を制度横断的に取りまとめた。

まず「総論」では、社会保障制度改革を進める上での基本的な視点を示している。少子高齢化や人口減少の進行、核家族化や就業形態の変化などにより、従前のような世代間扶養を基軸とすることや、家族や企業が社会保障の一部を代替することは限界に来ていることから、国民全体で支え合う体系へと再構築する必要があるとしている。

抜本的な改革にあたっては、「中福祉・中負担の社会保障制度の確立」「税・社会保険の役割の明確化と安定財源の確保」、社会保障番号やカードなどの早期導入をはじめとする「制度横断的なインフラ整備と適切なモニタリング」の3点を中心に取り組むべきとしている。具体的に、「中福祉・中負担の社会保障制度」では、社会保障制度の機能強化により、真の意味での「中福祉」を確立する一方、負担も引き上げ、給付と負担の適切なバランスを取るべきとした。この場合、イギリスやドイツを念頭において、将来的に、国民負担率はおおむね50%台、消費税率は10%台後半になることを想定している。

次に「各論」では、医療・介護、年金、少子化について、各分野の課題、問題点と改革の方向性を示している。

医療・介護では、サービス提供体制の大胆な改革により、安心で質の高い医療・介護サービスを享受できる環境を早急に整備すべきとしている。特に医療では、医師・診療科の偏在の解消、勤務医の就業環境の改善といった緊急課題への対応とともに、一層の包括化・標準化、混合診療などの施策を推進すべきとした。また、介護では、人材の安定的な確保と併せて、多様な居住系サービスの普及の必要性などを指摘した。

加えて、保険制度の改革についても言及しており、現行の長寿医療制度について、65歳以上の高齢者を包括的にとらえる体系に組み替えるとともに、給付財源も高齢化の進行にあわせて公費割合を高めるべきとした。

年金では、現行制度に起因する問題を抜本的に解決し、中長期的に持続可能な制度とするため、基礎年金の財源を税を基軸とする方向へ見直し、2025年度の全額税方式化に向けて、段階的に国庫負担割合を引き上げるべきとした。

少子化対策については、国の最重要課題として財政を重点投入し、保育サービスの拡充等に充てることを求めている。

これらの改革を実現するには、国民の理解を得つつ、段階的に負担を引き上げていく必要がある。そこで、15年度までの第1段階と最終目標年次の25年度までの第2段階に分けた上で、第1段階を「緊急課題への対応と社会保障制度の基盤整備」とし、消費税率換算で5%程度が、また第2段階を「安心で信頼できる社会保障制度の完成」と位置付け、消費税率換算で12%程度が、現状に比してそれぞれ追加的に必要であるとした。

【経済第三本部社会保障担当】
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