日本経団連は1月14日、東京・大手町の経団連会館で国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男事務局長との懇談会を開催した。当日は、田中事務局長から、世界エネルギー情勢と今後の課題について説明を聴き、意見交換を行った。田中事務局長の発言は以下のとおり。
IEAは、第一次石油危機後の1974年に石油を中心としたエネルギー安全保障のために設立された団体であり、石油の戦略備蓄など緊急時のエネルギー対応を主な活動としている。ちなみに、非常時における備蓄取り崩しの最終判断はIEA事務局長が行う。
今後、世界のエネルギー需要の構図は一変し、2030年には石油需要の58%を非OECD国が占めるであろう。エネルギー安全保障の確立に向けたIEAの最大の課題は、中国とインドのIEA加盟を実現することである。
一方、最近の地球温暖化問題の広がりを受けて、IEAの活動や役割も変わりつつある。昨年11月に公表した「世界エネルギー見通し2008」では、「450ppmシナリオにおけるCO2削減を行った場合のエネルギー面のインパクト」について重点的に分析した。今後は、エネルギー政策における需給サイドの影響や再生可能エネルギーならびに代替エネルギー等の分析等がIEAの大きな任務となる。
昨年12月にポーランド・ポズナニで開催されたCOP14では、CO2排出量の削減にはエネルギー問題の解決が不可欠であるとの理解が、各国において明らかに進んだことは評価できる。他方、エネルギー・トレンドから判断すると、社会面・環境面・経済面いずれにおいても持続可能とはいえない。
長期的なトレンドとしては、世界の一次エネルギー需要は大幅に増加する。年3.3%の経済成長を前提としてこのまま現在の状況が続けば、世界のエネルギー需要は今後年平均1.6%増加し、2030年には現在の水準と比べて約45%拡大する。
また、世界の気温上昇を2度以内に抑えるという450ppmシナリオを実現するためには、2030年に温室効果ガスを26ギガトン以内に抑える必要がある。そのためには、さらなる省エネの推進、再生可能エネルギーや原子力の活用、CCS(CO2回収・貯蔵技術)の実用化が必要不可欠である。IEAでは、こうした追加的なエネルギー投資額は、世界のGDPの0.6%に相当すると試算しており、今まさに大胆なエネルギー政策の実行が求められている。
IEAは、省エネ投資や再生エネルギーへの投資を促進する意味で「クリーン・エナジー・ニューディール」を訴えており、短期的な景気刺激策と中長期的なサステイナビリティーへの貢献に資する提言を行っている。