日本経団連タイムス No.2936 (2009年1月29日)

NICC協議会が第7回総会開催

−経済危機対応などで、欧州経営者団体幹部らと懇談


日本経団連のNICC協議会(立石信雄委員長)は16日、東京・大手町の経団連会館で第7回総会を開催した。日本経団連の関連組織であるNICC(日本経団連国際協力センター)の2008年度事業の進捗状況の説明を聴いたほか、欧州から訪日していた経営者団体の幹部らと経済危機への対応などについて懇談を行った。

冒頭のあいさつで立石委員長は、「日本の産業界の立場からアジアを中心とする開発途上国の経営管理者の人材育成、経営者団体の支援を行うことによって、現地の健全な労使関係の基礎をつくり、ビジネス環境の整備と安定的な経済発展に寄与してきた」とNICC事業の意義を強調するとともに、NICCを支援している協議会会員企業に感謝の意を表し、引き続き支援を呼びかけた。

続いて北川哲夫NICC専務理事が、08年度事業の進捗状況などを説明。08年度は、長期(8カ月)の「アジア諸国人事労務管理者育成プログラム」をはじめ、短期の招聘プログラムを7件、職場環境改善、人材の採用と確保、管理研修プログラム(MTP)などのテーマで6件の海外セミナーを実施し、また中国の労働法制の動向を調査するため、昨年11月に中国視察団を派遣したと報告した。

■ 懇談

その後、NICCの短期研修プログラムに参加中のフランス、ドイツ、オランダの経営者団体の幹部らと、現下の世界的な経済危機への企業としての対応などについて懇談を行った。

各国とも昨秋から急激に景気が悪化しているという共通認識の下、各国から対応策などの説明があった。フランス(MEDEF=フランス企業運動)は、企業は、短期的には有期雇用契約の延長停止、労働時間の見直し、休職・休暇の取得促進などを行い、長期的には従業員のエンプロイヤビリティー(雇用され得る能力)向上のための教育訓練に注力していると述べた。ドイツ(BDA=ドイツ使用者連盟、ゲザムトメタル=ドイツ金属産業経営者連盟)からは、使用者団体として、コスト削減のための賞与カット、雇用維持のための労働時間短縮などの一連の対応策をメニュー化し、企業に紹介しているとの説明があった。オランダ(VNO‐NCW=オランダ産業経営者連盟)は、起業家精神を刺激して新事業を興すことに力を入れるとともに、政府に効率的な設備導入などに対する投資減税を訴えていると述べた。また、オランダ(Euro‐Ciette=民間派遣企業欧州連合)から、派遣労働者の活動分野拡大と、派遣労働者と派遣先の労働者との均等待遇を規定した「EU派遣労働指令」が、昨年10月欧州議会で可決されたとの報告があった。

続いて行われた質疑応答の中で、オランダの参加者は、日本では労働者派遣事業の規制強化の動きがあると聞いているが、派遣労働を規制すれば雇用の柔軟性が失われるので、この動きは好ましくないとの意見を述べた。

また各国の参加者は、最近日本で話題になっているワークシェアリングを推進する条件として、労働時間短縮以前に、労働時間の柔軟化や仕事の効率化が必要なこと、パートタイム労働者とフルタイム労働者の時間当たり賃金等の労働条件を均等に扱うことが求められること、またホワイトカラー職のような仕事については、その分割が難しいことなどの課題があると指摘した。

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NICCは1994年に日経連(当時)が設立した団体で、開発途上国の経営者団体の健全な発展ならびに経営管理者の育成をめざし、招聘研修事業などを実施している。NICC協議会は、NICCを財政的に支援している企業で構成され、NICCの活動への理解を深めるとともに、委員企業の意見を集約してその活動に資することを目的としている。

【労政第二本部国際労働担当】
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