日本経団連タイムス No.2934 (2009年1月15日)

年金制度改革の方向性めぐり懇談

−社会保障委員会企画部会


日本経団連の社会保障委員会企画部会(渡邉光一郎部会長)は12月24日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本総合研究所の西沢和彦主任研究員から、年金制度改革の方向性、とりわけ基礎年金における財源のあり方を中心に、説明を聴くとともに懇談した。

西沢氏はまず、「厚生年金保険料約15%のうち、基礎年金保険料がどの程度なのか、だれもわからない。基礎年金の費用を直接負担する形になっておらず、『基礎年金拠出金』による財政調整の仕組みで成り立っている。どのように負担しているかが明確でないことが、基礎年金の問題の根源となっている」と、現在の年金制度の財源調達における基本的な問題点を指摘した。

その上で、「年金制度改革には、基礎年金に独自の財源を充てるという含意があってよい。基礎年金に独自財源を充て、1・2階の費用負担をきちんと切り分けることにより、1・2階それぞれを本来の役割にふさわしい制度として設計ができる。この点からいって、基礎年金の税方式化には、基礎年金にふさわしい財源を充てるという意義のみならず、2階の制度設計の自由度が増すという意義もある」と説明した。さらに、「1・2階を切り分けることにより、厚生年金のパートタイム労働者への適用拡大、加入期間の短縮なども可能となる。原点に立ち返り、わが国の年金制度は2階建てとなっていないことから、改革の議論を出発すべきである」と述べた。

次に、税と社会保険料に関して、「社会保障国民会議の報告のように、『税か保険か』の二分法ではなく、税と社会保険料に関して、事業主負担としての共通点と相違点を見いだす作業が必要である。保険料にしても、健康保険における高齢者医療への支援金等のように、拠出と給付が必ずしもリンクしていないケースもある。税と保険料が全く別物というわけではなく、再分配に使われている部分と、拠出と給付の関係がある部分とを分けて考える必要がある。再分配を目的とするならば、保険料と言いにくいが、その課税ベースを一つの事業所の賃金だけに限る必然性は乏しく、包括的な所得課税ベースとしていくことが望ましい」と指摘した。

また、基礎年金の財源に関しては、「何を充てるべきか議論があるが、所得税とした場合、包括所得課税となっていない現状を踏まえると、公平なのか疑問である。消費税の方が公平性に優れている」と説明した。

【経済第三本部社会保障担当】
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