日本経団連の社会保障委員会年金改革部会(山崎雅男部会長)ならびに同企画部会(渡邉光一郎部会長)は12月18日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、厚生労働省年金局の伊奈川秀和総務課長から、社会保障審議会年金部会における議論の中間的な整理について説明を聴くとともに意見交換を行った。伊奈川課長の説明の要旨は次のとおり。
平成16年年金制度改正では、長期的な給付と負担の均衡を確保し、公的年金制度を持続可能なものとすべく見直しを実施した。その中で基礎年金の国庫負担割合を2分の1へ引き上げることを盛り込んでおり、政府の責任として平成21年度当初から必ず実現すべきものである。また、5年ごとに実施するとされた財政検証は年金財政フレームの有効性を確認するため2009年に着実に実施すべく作業を進めている。
しかし年金制度に対する国民の不安感は増しており、不断の見直しを行っていくことが重要である。特に40年加入の満額年金の受給者が多数現れるようになった昨今、高齢者間の所得格差が拡大しているとの指摘と相まって、無年金者や低年金者の問題に焦点が当たるようになっている。
年金部会で議論された平成16年改正後の残された課題としては、(1)低年金・低所得者に対する年金給付の見直し(2)基礎年金の受給資格期間(25年)の見直し(3)2年の時効を超えて保険料を納めることのできる仕組みの導入(4)国民年金の適用年齢の見直し(5)パート労働者に対する厚生年金適用の拡大等(6)育児期間中の者の保険料免除等(7)在職老齢年金の見直し(8)標準報酬月額の上限の見直し――がある。これらの課題について、部会での議論を踏まえ、見直しにあたって考えられる論点を整理した。見直しにより追加的な費用が必要となる場合、保険料負担により対応するか、税財源で対応するかは重要な検討課題である。改革の実現にあたっては、国民生活に直接かかわる重要な問題であるため、国民的な理解を得ながら、さらに議論を進めていくことが必要である。
引き続き行われた意見交換では、(1)保険料軽減にしても公費なしにはできないわけで、税方式への移行措置ともとれる。制度のあり方を中長期的にとらえて、税方式について柔軟な議論を進めるべきではないか(2)低年金・低所得者に対して、どこまでを年金でみて、どこまでを生活保護でみると考えるのか(3)標準報酬月額の上限を見直した場合、企業のコスト負担はどうなるのか――などの意見、質問が出された。これに対し、(1)長期的視点の重要性は言うまでもない。社会保険方式と税方式についても海外では相互に補完する形で運用されているケースもあり、対立的な概念としてとらえる必要はない(2)基礎年金は老後の生活の基礎的な部分を保障しており、私的年金や貯蓄も含めて支えていく考え方であり、一方生活保護は健康で文化的な生活水準を保障するということで、年金よりも支給水準は高くなっているが、資産や収入をチェックするミーンズテスト(資力調査)を行った上で支給する。ヨーロッパでも社会扶助と補い合いながら国民の生活を保障しているケースが多い(3)厚生年金の標準報酬月額上限62万円を仮に健康保険の上限と同じ121万円まで引き上げると、事業主負担も併せた保険料負担が年間約290万円となり、マクロの財政影響では年間プラス8〜9千億円程度になる――との回答があった。