日本経団連タイムス No.2931 (2008年12月4日)

「高齢者雇用の促進に向けた取組みと今後の課題」発表

−企業の取組み状況と高齢者雇用促進への課題を整理


日本経団連は11月18日、報告書「高齢者雇用の促進に向けた取組みと今後の課題」を発表した。高齢者の雇用確保措置の上限年齢が2013年度までに段階的に65歳へと引き上げられていく中、同報告書はアンケートやヒアリングを基に、企業における高齢者雇用に関する取組み状況と今後の高齢者雇用促進に向けての課題を整理している。

■ 企業における高齢者雇用確保措置の取組み

日本経団連が行ったアンケート調査によれば、改正高年齢者雇用安定法に基づく雇用確保措置への対応として98.4%の企業が再雇用等の「継続雇用制度」で対応しており、継続雇用期間の上限年齢については、65歳までの措置を既に制度化している企業が68.2%に達している。
継続雇用制度における対象者の選定については、「希望者全員」とする企業が15.6%であるのに対し、「一定の基準を満たした者」とする回答が84.2%と大多数を占めている。別途行われたヒアリング調査によれば、具体的な基準として「健康状態」や人事考課などこれまでの「勤務実績」を採用しているケースが多く見られたが、何らかの基準を設けていても、実際には希望者の大多数が継続雇用されている。
高齢者雇用確保措置の際の処遇のあり方は各社各様であるものの、多くの場合は在職老齢年金、高年齢雇用継続給付といった公的給付を考慮して設計を行っている。一方で賃金水準の引き上げは公的給付額の減少につながるため、処遇水準の引き上げが必ずしも労働者のインセンティブに直結しないなどの意見もあった。

■ 65歳までの雇用確保のためのさらなる課題

継続雇用されている高齢者の企業に対する評価や、雇用確保措置に対する従業員側の受け止め方はおおむね良好であるものの、高齢者雇用を促進する上でのさらなる課題として、2点が指摘できる。
第一は、対象者の定年到達時点での職務上の能力と提供できる職務のマッチングをいかに図っていくかという問題であり、職務の開発、処遇、高齢者の意欲、そして健康状態などにも配慮した上で、高齢者自身も満足できる働き方をいかに見いだしていくかが重要な論点となる。
第二は、処遇面からも、個々人の能力や健康面に加え、「短時間で働きたい」「定年退職前より軽微な仕事に就きたい」などの本人の希望も勘案し、仕事内容や就労形態に応じた賃金の設定をいかに行うかである。この点については、各企業の処遇のあり方はもちろんのこと、公的給付のあり方なども検討課題となる。

■ 65歳以上の雇用の確保への課題

65歳以降の雇用については、「法律などで義務付けるのではなく、各企業が実情に応じて可能な限り取り組んでいくべきである」という意見が多数を占めた。個人差の大きい健康面や能力、あるいは高齢者自身の意思の尊重といった観点からも一律に法定化していくことに対しては慎重な意見が多い。当面は改正高齢法に則り、65歳までの雇用確保措置をいかに着実に進展させていくかが企業にとっての最優先の課題であるといえる。

【労政第一本部雇用管理担当】
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