日本経団連の労働安全衛生管理システムワーキング・グループ(福光保典座長)は2、3の両日、事業所見学会を行った。これは、2002年の三洋電機群馬製作所の見学を皮切りに、安全衛生活動に積極的に取り組み、成果を上げている事業所を訪問することで業界団体・企業間で好事例を共有化し、安全衛生活動の活性化につなげていくことを目的に、毎年実施しているもの。8回目となる今回は、8企業・団体から12名が参加し、JFEスチール西日本製鉄所(倉敷地区)、三菱化学水島事業所を見学した。
JFEスチール西日本製鉄所は、敷地面積1089万平方メートル、従業員約5600人が勤務する世界屈指の競争力を持つ製鉄所である。
冒頭、菱沼至副所長から、「多くの従業員が入れ替わるところでの安全への取り組みは難しい。慣れの中で当たり前の安全を確保することが重要」とあいさつがあった。次に、岡崎慎二・倉敷安全衛生室長が具体的な安全衛生活動の取り組みについて、「安全はすべてに優先する〜災害の危険があるときは躊躇せずに止める」を基本理念としていると説明。活動実施の重点として、(1)重大災害・法令違反につながる項目の重点フォロー(2)階層別人材育成教育による安全意識・知識・危険感受性向上(3)活性化活動――を挙げた。また、5カ年計画の3年目である作業標準への「リスクアセスメント」の導入については、安全対策の優先順位化などで効果があると述べた。続いて、高炉、転炉、厚板工場の現場を見学した後、質疑応答、意見交換などを行った。
三菱化学水島事業所は、1964年の創業。敷地面積210万平方メートルで、約1900人の従業員が勤務している。同事業所が存在する水島コンビナートは、晴天の多い穏やかな気候、豊かな水量、地震が少ないことなどの特徴から数多くの企業が拠点としており、製品出荷額は岡山県全体の5割強を占め、全国でも有数の臨海工業地帯となっている。
木下泰彦・RC(レスポンシブル・ケア)推進部長は、安全活動の現状について、「従業員の若年化、経験不足は大きな課題であり、PDCAサイクルを確実に回し、事故が起きる前に潜在危険要因を把握し摘み取るようにしている」と説明した。さらに、「環境・安全の確保は事業活動の大前提であり、水島事業所では10月1日現在でゼロ災害継続日数が1182日と最長記録を更新中で、安全活動の成果がみられる」と続けた。この後、事業場内と協力会社が安全活動のため自発的に設置した教育ルームなどを見学した。続いて、人材教育を担当するエムネットの武縄修一・水島坂出センター長から「育成の責任は上司、成長の責任は本人」という基本から、いかにして経験不足を補い、ものづくり力・現場力を強化しているかについての説明を受けた。最後に、危険に対する認識を深めることを目的に行われている火災や爆発、「はさまれひきこまれ」等の実験を体感し、安全教育の必要性を改めて認識した。
見学会を振り返って、福光座長は、「今回の事業所見学会を通して、安全衛生活動の基本が現場にあることを確認できた。これから労働災害を少しでも低減できるよう、安全衛生活動とこのワーキング・グループの活動を活性化していきたい」と述べた。