日本経団連タイムス No.2924 (2008年10月9日)

常任理事会で「税制抜本改革」をテーマに講演

−年末には段取り明示へ/柳澤・自民党税制調査会小委員長


日本経団連が2日、東京・大手町の経団連会館で開催した常任理事会で、柳澤伯夫・自由民主党税制調査会小委員長が「税制抜本改革」をテーマに講演した。

柳澤氏は冒頭、政府が公表した「安心実現のための緊急総合対策」に含まれる税制項目について説明。特別減税は、物価高騰に伴い、痛みを感じている家計に対する緊急支援として単年度限りで今年度内に実施するが、年末の抜本改革の議論に際して特別減税の具体的な中身について議論すると説明。また、抜本改革と絡めて、給付付き税額控除などについても検討が必要と述べた。

証券税制については、これまで一律10%の軽減税率を適用してきた配当金・譲渡益に対して、2008年度税制改正で、配当金は100万円、譲渡益は500万円までに限り、2010年まで10%の軽減税率を継続し、上限を超えた部分については20%の税率を適用する措置を行ったが、米国をはじめとする金融市場の混乱を受け、年末に、証券税制の見直しも議論の可能性があるとの見解を示した。

税制抜本改革の中心となる消費税率の引き上げについては、現下の経済情勢において来年度からの実施は困難だが、代表質問において、麻生総理は「税制抜本改革の道筋を年末に示す」と答弁しており、年末には、抜本改革の工程表や段取りを示すことになろうと述べた。税制抜本改革の課題として、(1)2009年度に実施することが法定されている基礎年金国庫負担割合の引き上げ(2)2011年度における基礎的財政収支黒字化の達成(3)道路特定財源の一般財源化(4)地方税収の安定化(5)定額減税――の5つを提示した。基礎的財政収支の黒字化については、団塊の世代が年金受給者になり始める2011年度までに達成されなければ、その後の財政健全化が難しくなると述べた。

消費税については、基礎年金国庫負担割合引き上げの安定財源としてふさわしい税目と述べた。また、社会保障国民会議で推計をまとめつつあるが、おそらく消費税率は10%よりも低い水準でも、社会保障の安定財源化と2011年度における基礎的財政収支の黒字化を達成できると指摘した。

法人税については、米国が早晩、法人実効税率を引き下げる可能性が高く、日本も、国際競争力強化の観点から法人実効税率を引き下げるべきと指摘。その場合、地方の法人事業税の見直しが考えられると述べた。同時に、地方の担う社会保障サービスの確保と地方税収の安定化の観点から、地方消費税を拡充すべきという見解を示した。

所得税については、高所得者に有利な所得控除方式を改めて税額控除方式に組み替え、負の所得税についても検討すべき時期に来ていると述べた。

中小企業税制については、軽減税率の引き下げとともに、軽減税率の対象範囲の拡大をすべきと述べた。また自動車関係諸税については、簡素化とともに、世論の支持が得られるように、軽減策を講じるべきと述べた。

【経済第二本部税制・会計担当、総務本部総務担当】
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