日本経団連は18日、東京・大手町の経団連会館で中小企業委員会(澤部肇委員長)を開催し、根本特殊化学の根本郁芳会長による「当社の海外展開の現状と課題」と題する講演と、経済産業省中小企業庁事業環境部企画課の川上一郎調査室長による「2008年版中小企業白書」の説明を聴くとともに、08年度の委員会の進め方について審議を行った。
時計や計器等の夜光塗料加工・販売を行う同社は、技術開発型企業として、夜光塗料分野に事業資本を集中させ、世界17カ国で特許を取得した主力商品「ルミノーバ」(避難誘導標識等に活用できる、環境負荷の少ない夜光塗料)を開発。「蛍光体製造技術」「放射線取扱い技術」「塗装印刷技術」の3つのコア技術を応用し、国際的に通用する付加価値の高い製品の開発に力を入れ、「セーフティー」「セキュリティー」「ヘルシー」の産業分野において、経営の多角化を進めている。
海外には、1977年のスイスでの時計向けの夜光塗料販売を皮切りに、現在は中国に6カ所、ポルトガル、スイスに各1カ所ずつ生産拠点を構え、販売網や代理店を含め、世界8カ国に展開している。
販売量の内外比率については国内40%・海外60%、生産量では国内30%・海外70%の割合となっている。
また、従業員数は、単体56名に対し、国内外の関連会社を加えた合計では1268名となっている。そのうち約7割が海外の関連会社の従業員であり、事業、人員の両面で海外比重が年々高まってきている。
海外展開における経営課題としては、特に中国における、(1)特許侵害・査定遅延など特許取得の難しさ(2)税制(増値税・国策関税)の変更による収益環境の悪化(3)従業員の賃金の上昇(4)良質な人材の確保の難しさ(5)行政からの急な工場移転の要請――などが挙げられる。
中小企業が海外展開を行う上で大切なことは、その土地に根付いた経営を行うことにある。ポルトガルでは、現地の行政の要請に応えて、学校や幼稚園の設備改善に協力したり、中国では、大連の学校に奨学金を提供し、留学生を日本に招いたりして、事業で得られた利益を現地にも還元し、社会貢献に力を入れている。
07年度は、原油・原材料価格の高騰や、改正建築基準法施行後の建築着工件数の減少等による影響を背景に、中小企業の業況が悪化している。
2008年版中小企業白書では、中小企業の生産性の向上(労働生産性向上の課題、サービス産業の課題、IT活用の課題、グローバル化への対応)と地域経済と中小企業の活性化の2点に重点を置いて分析している。