日本経団連は16日、「豊かさを実感できる住生活の実現に向けた提言」を公表した。今年末から来年3月末にかけて、住宅ローン減税をはじめとする住宅関連の税制措置が軒並み期限切れを迎える。そこで日本経団連では、改めて今日の住宅を取り巻く状況を評価した上で、今後の住宅政策のあるべき姿を検討し、今般、新たな住宅税制を提言した。提言の概要は次のとおり。
まず、住宅政策を国の政策の柱の一つとして位置付け、強力に推進する必要がある。その理由は三点ある。第一に、良質な住環境は、経済・社会の安定的発展のためのインフラとなる。また、一戸一戸の住宅が魅力ある街並みの構成要素であることからも、住宅は重要な個人資産であると同時に、社会的なインフラといえる。第二に、地球環境問題、大震災、少子・高齢化などの社会的課題への対応に、省エネ性能の向上、耐震性の強化、バリアフリー化などにより、住宅が果たす役割は極めて大きい。第三に、住宅投資は関連産業への波及効果が大きく、内需主導型成長の柱としての役割が期待される。従って一時的な景気対策としてではなく、恒久的な経済政策として、住宅政策を確立することが求められる。
わが国の総人口は2004年をピークに減少に転じているが、世帯数は15年まで増加を続ける見通しであり、引き続き住宅の新規取得のニーズが存在する。特に若年層を中心として、依然として根強い持ち家意欲が見受けられる。さらに、国民のライフスタイルの変化に伴い、二世帯居住や二地域居住、都心・地方への移住など、人々が求める住まい方が多様化しており、幅広い世代にわたり多様な住宅ニーズが生まれている。他方、近年、個人所得が伸び悩む一方で、資材価格の高騰等により住宅価格は上昇傾向にあり、そうした多様な住宅ニーズの実現が阻害されている。
そこで、良質な住宅ストックの充実に向けて推進されるべき重点施策を改めて検討することが求められる。重点施策としては、(1)一定の水準を備えた住宅の新設および老朽化住宅の改修・建て替えによる、良質な住宅の供給促進(2)既存住宅の価値が適正に評価され円滑に流通する市場の整備(3)賃貸住宅の質の向上(4)まちづくりの観点からの住宅政策――が挙げられる。
これらを支えるため、若年層も含めた住宅取得支援のための住宅ローン減税制度と、社会インフラとしての良質な住宅ストック形成を促進するための住宅投資減税制度を並立させ、利用者が適用条件に応じて選択できるようにすべきである。住宅投資減税制度については、省エネ、バリアフリー、耐震等の面で一定の性能基準を満たすことを条件とし、新築住宅、既存住宅、リフォームを問わず、また自己資金、ローンを問わず総費用を対象とする制度とすべきである。
言うまでもなく、住宅ローン減税制度については、現行制度を拡充し、より実効ある、かつ中長期的に安定した制度として継続する必要がある。併せて住宅取得時の負担軽減および既存住宅の流通促進の観点から、不動産流通税の見直し、都市・地域再生推進のための特例措置の延長も不可欠である。