全国労働委員会使用者委員連絡会議(代表幹事=杉山幸一・中央労働委員会使用者委員)が主催する研修会が4、5の2日間にわたり、東京・大手町の経団連会館で開かれ、全国から48名の使用者委員が参加した。
同連絡会議は、労働委員会の運営に関するさまざまな課題について使用者側委員としての対応を協議することなどを目的として、2000年に発足した全国の使用者委員を会員とする組織であり、日本経団連が事務局として活動を支援している。その大きな活動の柱として、使用者委員同士の相互研鑽や専門能力の向上を目的とする研修会を実施しており、今回が8回目の開催となる。
研修会1日目は、杉山代表幹事のあいさつに続き、前中央労働委員会会長の山口浩一郎氏(上智大学名誉教授)が、「公益委員から使用者委員へ望むこと」をテーマに、公益委員としての自身の経験とわかりやすい例えを交えながら、使用者委員に期待する役割について講演。続いて、中央労働委員会事務局第三部会担当審査統括室長の鈴木裕二氏から、「不当労働行為審査手続の概要」と題し、審査手続きの基本的仕組み、審査体制の概要、申立てから調査、審問、証拠、救済命令、和解などの各段階について、詳しい説明があった。1日目の最後は、慶應義塾大学大学院教授の山川隆一氏が、「最近の裁判例・労働委員会命令例の動向」と題して、日本の労働判例の特色や最近の判例の動向、労働委員会で扱う不当労働行為と民事訴訟事件の関係などを解説。さらに就業規則の不利益変更、整理解雇、配転・出向などに係る代表的な裁判例について説明した。
2日目は、弁護士の中山慈夫氏が、「労働委員会制度の概要-労組法・労働委員会規則の解説」と題して、労働委員会制度の意義と役割、不当労働行為の類型や審査手続きなどについて解説した後、自身の弁護士としての経験から使用者委員として留意すべき点などについて指摘した。
研修会の締めくくりとして、中央労働委員会使用者委員の是松恭治氏から、「使用者委員に求められる役割」をテーマに、自らのさまざまな経験を踏まえながら、使用者委員としての心構えなどについて人生訓を交えた講演があり、研修会は盛況のうちに幕を閉じた。
受講者のアンケートでは、約9割が「満足した・ほぼ満足した」と回答し、「所属する労働委員会では研修の機会があまり多くないため、大変勉強になった」などの声が数多く寄せられた。ほかにも「和解の具体的な好事例を紹介してほしい」「参加委員同士の意見交換を通じて、見識を深めたい」といった実務能力向上の意欲を表した前向きな意見が多くみられた。