日本経団連自然保護協議会(大久保尚武会長)は8月29日、東京・大手町の経団連会館で「生物多様性条約COP9からCOP10に向けて‐生物多様性保全COP10への針路を考える」をテーマとする企業とNGO等との交流会を開催した。
開会あいさつで大久保会長は、「産業界においては、地球温暖化対策は相当進んだが、同時に生物多様性保全への取り組みの位置付けも高まっている。特にNPOとの双方向のコミュニケーションを深め、NPOと一緒にさまざまなプロジェクトを進めることで、企業や社員がよい刺激を受け、生物多様性に配慮した行動を取るという流れが確実にできつつあると考えている。生物多様性に対する認識は、国際的にも深まっており、洞爺湖サミットの首脳宣言でも触れられている」と述べた上で、「2010年には名古屋で国連の生物多様性条約締約国会議COP10が開催される。日本で開催されるCOP10が、生物多様性を重視する企業風土、社会風土に向けた重要な契機になることを期待している。そのためには日本の企業はNPOとの交流やコラボレーションを通じて育んだパートナーシップをより発展・進化させていく必要がある」との考えを示した。
事務局から自然保護協議会の取り組みについて説明があった後、交流会では、生物多様性条約第10回締約国会議誘致委員会アドバイザー・名古屋市立大学准教授の香坂玲氏が「生物多様性保全COP10への針路を考える」と題する講演を、聖護院門跡門主の宮城泰年氏が「山川草木悉有佛性(さんせんそうもくしつうぶっしょう)」と題する特別講演を行った。この中で香坂氏は、生物多様性は環境や科学の問題であるだけでなく、国際社会や経済、企業活動の問題でもあることを強調。企業は生物多様性保護を義務としてばかりとらえるのではなく、Win‐Winの関係であり、差別化を図る契機となることを理解すべきだと述べた。
また、COP10に向けて企業は、セクターを越えた対話を行っていくべきだとの考えを示した。
宮城氏は、仏教者・修験者からみれば、地球上のすべてのものは互いに関わりあって生かし生かされており、単独自存のものはないと述べた上で、それらが共生していくためには人間一人ひとりが他を尊重し、欲望をコントロールし、宗教的な節度ある生き方を自覚しなければならないことを指摘した。
交流会は引き続きパネルディスカッションに移り、香坂氏、宮城氏、バイオインダストリー協会生物資源総合研究所所長の炭田精造氏、WWFジャパン自然保護室次長の草刈秀紀氏、森ビル取締役総合計画統括部長の稗田泰史氏をパネリスト、自然保護協議会企画部会長の石原博氏を進行役に、生物多様性保全について何を重視すべきか、COP10を日本で開催することの意義は何か、COP10に向けて企業にはどのような行動が必要とされるかなどを議論した。
パネルディスカッションでは、「量より質を重視することや、身近なところから取り組むという発想も必要である」「過去の成功例、失敗例に学ぶべきである」「生物多様性保全に向けて何ができるかのメニューづくりが重要である」などの意見が出た。