日本経団連タイムス No.2918 (2008年8月28日)

平成16年年金制度改正と残された課題で意見交換

−社会保障委員会年金改革部会


厚労省担当官から説明聴く

日本経団連の社会保障委員会年金改革部会(山崎雅男部会長)は1日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催、厚生労働省年金局の塚本力年金課長を招き、平成16年年金制度改正と残された課題について説明を聴くとともに意見交換を行った。塚本課長の説明は次のとおり。

平成16年年金制度改正では、年金制度の持続可能性を高めるために、給付と負担の見直しを中心とした改正が行われた。負担面では将来の厚生年金の保険料は18.3%、国民年金の保険料は1万6900円を上限に固定し、その引き上げ過程とともに上限を法律上に明記した。給付面ではマクロ経済スライドを導入し、平均賃金の上昇率から労働力人口の減少率と平均余命の延びを控除して年金給付額とする一方、標準的な年金受給世帯の給付水準は、現役世代の平均収入の50%を上回る水準を確保することとした。

また、基礎年金の国庫負担割合を平成21年度までに3分の1から2分の1へ引き上げることを法律上に明記したほか、多様な生き方・働き方に対応できる制度となるよう、高齢者の就業と年金、女性と年金、年金制度における次世代育成支援、障害年金の改善などについて所要の措置を行うことや、国民年金保険料の納付率を5年後に80%とする目標の実現に向けて未納対策を徹底すること、安全で効率的な年金積立金の運用を行うために、特殊法人年金資金運用基金を廃止し、年金積立金管理運用独立行政法人を創設することなどを取り決めた。

改正事項は順次、施行されてきたが、その他の動きとして、被用者年金一元化法案(共済年金制度を厚生年金保険制度に合わせる方向で同一保険料、同一給付を実現する)が平成19年4月に国会に提出され、現在も継続審議の取り扱いをされているほか、今年1月に設置された社会保障国民会議では公的年金制度の財政方式に関し、税方式も含めて定量的なシミュレーションが実施され、公表された。

平成16年改正後の残された課題としては、(1)国民年金保険料の徴収時効(2年)の見直し(2)老齢基礎年金の受給資格期間(25年)の見直し(3)低年金・低所得者に対する加算等(4)国民年金保険料の免除制度(5)育児期間中の保険料免除(6)非正規雇用者に対する厚生年金適用の拡大等(7)成人年齢の見直しと国民年金制度の適用年齢(8)高齢者雇用と整合的な仕組み(在職老齢年金等)、ならびに第3号被保険者制度のあり方等――がある。これらの課題について、各方面からの提案も踏まえ、見直しにあたって考えられる論点を整理し、社会保障審議会年金部会で議論が行われており、さらに秋以降、検討を深めてもらう予定である。

■ 意見交換

引き続き行われた意見交換では、(1)今後のベストシナリオは年末の税制改正で消費税引き上げを決め、基礎年金の国庫負担割合2分の1引き上げへつなげることだが、今日説明のあった残された課題の取り扱いを含めて、プロセスはどのようになるのか(2)国民年金保険料の納付率を目標に向けてどのように上げていくのか――などの質問が出された。

これに対し、(1)国民年金法の本則では国庫負担2分の1が記載されており、附則に引き上げ年度として平成21年度までの間のいずれかの年度を定めるとある。年度を定める上で法律が必要で、そのときに併せて残された課題の中から提案するものがあるのか社会保障審議会年金部会で議論してもらう(2)平成16年改正後の残された課題の多くが納付率アップにつながるものであるが、強制徴収の徹底や非正規雇用者などの事業主による代行徴収といった課題もあると考える――との回答があった。

◇◇◇

なお、社会保障委員会年金改革部会では、社会保障審議会年金部会での議論に対応し、平成16年年金制度改正後の残された課題について、さらに掘り下げた検討を進めていくこととしている。

【経済第三本部社会保障担当】
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