厚生労働省の中央最低賃金審議会(会長=今野浩一郎・学習院大学教授)は6日、厚生労働大臣に対し、2008年度地域別最低賃金額改定の目安について答申した。答申は、今年度の目安について、その金額に関し労使の意見の隔たりが大きく、意見の一致をみるに至らなかったため、昨年同様目安に関する公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するというもの。公益委員見解における今年度の目安額は、6月30日の諮問に際し、「現下の最低賃金を取り巻く状況や、本年7月1日に施行されることとなる最低賃金法の一部を改正する法律の趣旨を踏まえ、加えて、成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論(注)にも配意した」調査審議が求められたことに特段の配慮をした答申内容となった。
(図表1) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(図表2) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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具体的には、Aランク15円、Bランク11円、Cランク10円、Dランク7円となった(図表1参照)。ただし、最低賃金改正法の趣旨を踏まえ、一定の前提の下に最低賃金額と生活保護とを比較した結果、最低賃金額が生活保護を下回る12都道府県については、これを解消するための期間(年数)で生活保護との乖離額(図表2のC欄)を除して得た額とランクごとの引き上げ額とを比較して大きい方の額を目安とすることとなった。
なお、生活保護との乖離額を解消するための期間については、公益委員見解で示された考え方に基づいて地方最低賃金審議会が定め、今年度の具体的な引き上げ額が決定されることになるが、厚労省が一定の前提を置いた場合の試算によると、引き上げ額の全国加重平均は15円となる。
目安答申にあたっては、「目安に関する小委員会」において徹夜審議を含む4回にわたる審議を行った。審議において使用者側委員は、景気の現状は1年前とは全く異なる様相を呈しており、日本経済全体としては踊り場局面にあるが、原燃料の高騰等により、企業業績は減益、景況感も悪化、倒産件数も増加傾向にあることを指摘した。また、地域経済の現状についても、足下の景気は全体として減速しており、有効求人倍率や失業率についても、地域間で相違がみられるとも指摘した。その上で、最低賃金を決定する際の決定基準の一つである「労働者の生計費」を考慮するにあたって、生活保護に係る施策との整合性に配慮することが法律に明記されたこと、加えて、諮問の際に求められた「成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論」への配意について真摯に受け止めて議論することが必要であるが、経済の状況は全体として厳しい状況にあり、特に、わが国企業数の99.7%を占め、労働者の7割を雇用している中小・零細企業はより厳しい状況にあること、さらには、地域間のばらつきもあることなどから、企業の存続や雇用に及ぼす影響を考慮する必要があるとして、大幅な最低賃金の引き上げを行える状況にはないことを主張していた。
一方、労働者側委員は、食料品などの生活必需品の値上がりが顕著にみられることを指摘し、生活防衛の観点からも最低賃金の大幅な引き上げが必要であると主張。さらに、改正最低賃金法の趣旨を踏まえ、すべての労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護水準を上回ることは当然として、働く人の賃金の底上げにつながる最低賃金とすべきであるとし、具体的には、高卒初任給や、一般労働者の平均賃金の50%程度、連合が試算した最低生計費からは時間給900円を超える水準が必要であり、この水準に向け中長期的に引き上げるために、50円程度の引き上げを図る必要があると主張していた。
今後、目安答申を参考に、各地方最低賃金審議会で改定審議が行われ、今年度の地域別最低賃金額が決定される予定。
日本経団連は、目安審議にあたって、労使関係委員会や、地方経営者協会の最低賃金担当者で構成する最低賃金対策専門委員会で審議状況等を報告、対応について協議し、同審議会に推薦している使用者側委員の対応に反映させた。同委員は、社会的な視点を踏まえつつ、最低賃金の引き上げは、企業の生産性向上の裏付けを得て図られるべきという姿勢で対応した。
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