日本経団連は6月18日、東京・大手町の経団連会館で、知的財産委員会企画部会(加藤幹之部会長)を開催した。
会合では、特許庁総務部企画調査課の阿部利英課長から、特許庁のイノベーションと知財政策に関する研究会・ワーキンググループが取りまとめた政策提言案について説明を聴くとともに、意見交換を行った。政策提言案に関する阿部課長の説明概要は次のとおり。
特許法や審査基準などの国際調和を進めるとともに、各国特許庁間をネットワークで結び、「仮想的な世界特許庁」の構築をめざす。
現行の早期審査制度よりも迅速な審査を行う「スーパー早期審査制度」を導入し、多段階の審査体制を実現する。さらに将来的に出願人の求めるタイミングでの審査を可能とする柔軟な審査体制の構築をめざす。
各国特許法の調和に向けて、米国の先願主義への移行を後押しするとともに、わが国が欧米間の調整役として、各国間で異なっているグレースピリオド(発明の公表から出願までの猶予期間)のあり方などについて、合意に向けた議論をリードしていく。
審査基準の策定・見直しプロセスの透明化を促すため、「審査基準専門委員会(仮称)」を設置し、オープンな議論を通じて、特許の取得予見性と権利の安定性を確保する。
「特許権の適切な行使のあり方に関する検討委員会(仮称)」を設置し、特許権の行使に対する権利濫用法理の適用の考え方を明確にするガイドラインについて検討を行う。
説明後に行われた阿部課長との意見交換では、日本経団連側から、「米国では強すぎる特許権の弊害などを踏まえ、権利のあり方を見直す動きがある。オープンイノベーションの流れの中で、わが国として権利のあり方について考え方を整理しておく必要がある」との発言があり、これに対して阿部課長からは、「強い権利がイノベーションの障害となる場合もあるが、今後もプロパテント政策(知的財産の創造・保護・活用を重視する政策)は基本的に維持していく。権利のあり方については、イノベーション促進の観点から検討していきたい」との見解が示された。
日本経団連では、今回の提言に盛り込まれた内容の具体化に向けて、知的財産委員会を中心に活動を行うとともに、イノベーション促進のための知財制度の整備に向けた取り組みを進めていくこととしている。