日本経団連は20日、報告書「サービス産業における中小企業の生産性向上の方向性」 <PDF>を発表した。同報告書は、サービス産業の中小企業に、生産性を向上させるために必要な考え方や方策を提供することで、今後の企業経営の参考に資することを目的としている。
同報告書の概要は次のとおり。
現在、先進諸国において、名目GDPや雇用者に占めるサービス産業の比重が高まっている。サービス産業のシェア拡大を受け、各国ではサービス産業育成のために、研究開発体制の強化、インフラ整備、規制改革などを積極的に進めている。 日本においてもサービス産業の比重は高まっている。そのため、政府はここ数年、サービス産業育成のための施策を次々と打ち出しているところである。
サービスは、(1)同時性(2)無形性(3)非反復性――という特性を持っているため、「利用コスト(交通費、移動時間等)が大きい」「輸送が困難」「在庫が不可能」等の特徴を持つ。
このような特性を踏まえた上で、日本のサービス産業を概観すると、次の4つの特徴が挙げられる。
サービス産業における企業が競争力を高め、発展していくためには、サービスの特性を踏まえた上で、新たな需要を喚起し、供給能力を高めていかなければならない。
需要獲得のための方策としては、消費者行動のフェーズに応じた戦略構築が必要である。一般的に消費者は5つの行動フェーズを取ると考えられる。すなわち、(1)欲求・認識(2)情報収集(3)評価(4)購入(5)購入後の評価――というフェーズであるが、これら各フェーズに応じた適切な取り組みをいかに実施するかが企業の検討課題となる。
供給能力(=競争力)の強化のためには、(1)高度な能力を持った人材の育成(2)ICTの活用による知識集約型産業への転換の促進――が求められる。前者については、経営者が策定した戦略を実践する「ミドル・マネージャー」と「現場従業員(コンタクト・パーソン)」を育成していくことが必要となる。また、後者については、ICTを新規顧客獲得、ビジネスモデルの発展、企業内コミュニケーションの円滑化など、戦略的な活用を考えていくことが必要になる。
今後、サービス産業を展開していく上では、(1)地域コーディネート機能の充実・拡大を図ることで、地域経済と連携していくこと(2)ICT教育の促進など、政府支援策を有効活用していけるようにすること――の2点が必要である。
サービス産業の今後の課題としては、(1)少子高齢化へ対応すること(2)「サービス」に対する考え方を見直し、再整理すること(3)経済の「サービス化」の進展に対応していくこと――の3点が挙げられる。