4月21日、世界最大級の産業技術総合見本市であるハノーバー・メッセ(今年は日本がパートナー国)に合わせて日独ビジネス・サミットが開催され(ドイツ産業連盟=BDI、ドイツ産業見本市会社共催)、日本経団連から米倉弘昌副会長・ヨーロッパ地域委員長が参加。また米倉副会長は、これに先立ち、メルケル・ドイツ首相、安倍晋三総理特使出席の下で行われたメッセ開幕式にも出席した。ビジネス・サミットの概要は次のとおり。
トゥーマンBDI会長の開会の辞に続き、米倉副会長、安倍特使からあいさつがあった。
米倉副会長は、「ヒト、モノ、資本、サービス、知識の自由な移動を可能とするシームレスなビジネス空間を日・EU間につくり出すため、制度やルールの整備・改善・調和を積極的に進める必要がある。関税の問題は抵抗も強く解決が難しいが、双方が知恵を絞る必要がある。日本経団連では、日・EU経済連携協定(EPA)の締結に向け産官学の共同研究を早急に開始するよう提言している。世界経済の持続的でバランスの取れた発展に向け、地球温暖化への対応等において日独が連携・協力を深めることは両国および日・EU関係に新たな息吹を吹き込むだけでなく、世界経済の持続的成長にも大きく貢献する」と述べた。
また安倍特使は、「日本が今回メッセのパートナー国となったことを契機に日独関係が緊密さを増すことを期待する。世界経済の不透明感が増している今こそ、ダイナミズムの創出に向けて動き出す必要がある。日独は自由貿易の旗手としてWTOドーハ・ラウンドの妥結に向け協力する必要がある。民間レベルで日・EU経済統合のあり方が検討されているが、双方に利益となる提案がなされることを期待している。低炭素社会の実現には、産業界と政府の協力、強い意志とリーダーシップ、技術革新が不可欠である」とあいさつした。
続いて、パネル・ディスカッションが行われた。「貿易・投資―日・EU協力の可能性」、米倉副会長が討議に加わった「持続可能性の実現に向けた協力―気候変動とエネルギー効率」の概要は次のとおり。
日本側から、EU市場の問題点として、一部製品に対する高関税、対外障壁となりかねない規制・基準、加盟国間で異なる制度の解釈を指摘。これに関連して、日・EU経済統合協定(EIA)構想の議論を紹介したのに対し、ドイツ側から、WTOドーハ・ラウンドに悪影響が及びかねず、時期尚早との指摘があったところ、日本側からは、ドーハ・ラウンドとEIAを並行して追求することは可能との見方が示された。ドイツ側からは、EIAでは非関税障壁について話し合うべきであるとの意見も出された。対日市場アクセスをめぐっては、ドイツ側から、日本は重要でイノベーティブな市場との評価が聞かれた一方、日本における規制・制度の一層の改善を期待するとの発言があった。これに対し、日本側は、対日直接投資の倍増方針に沿って改革を進めている現状などを説明した。
日本側から、直前に行われたG8東京ビジネス・サミットの共同声明(4月24日号既報)を紹介。また、日本の経済界として、自主行動計画の推進によって引き続きCO2削減に貢献していく考えであることを説明した。
ドイツ側は、太陽光・風力発電等に関する日本との技術交流、協力の可能性に言及した。ポスト京都議定書について、日本側は、すべての主要排出国が参加する公平で実効性の高い国際枠組みに関する議論が優先されるべきであると主張し、まずCO2削減目標ありきの議論は適切でないと指摘した。
また、セクトラル・アプローチを推進して新興国のエネルギー効率の向上に寄与していく日本経済界の姿勢を強調した。
さらに、日本側が、エネルギー消費量の削減、再生可能エネルギー等の導入に積極的な姿勢を見せたのに対し、ドイツ側は、太陽光・風力などエネルギー源の分散化を、原子力発電から撤退した自国の課題に挙げた。
最後に、日独が協力して技術開発をリードしていくことが重要という点が双方から強調された。