日本経団連タイムス No.2904 (2008年5月15日)

第55回シンポジウム開く

−わが国における道州制のあり方を議論/21世紀政策研究所


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は4月22日、第55回シンポジウム「地域再生戦略と道州制」を東京・大手町の経団連会館で開催した。また、シンポジウムと同名の報告書を取りまとめ、21世紀政策研究所のホームページ(URL=http://www.21ppi.org/)にも公開し、わが国における道州制のあり方について、広く議論を提起している。

シンポジウムでは、宮原理事長の主催者代表あいさつの後、自由民主党道州制推進本部本部長代行の杉浦正健衆議院議員が基調講演を行った。その後、同研究所の林宜嗣研究主幹(関西学院大学教授)の報告に続いて、パネルディスカッションが行われた。当日は、日本経団連の会員企業・団体の担当者、地方自治体関係者など約160名が参加し、道州制論議の最前線で活躍する講師・パネリストの説明に熱心に耳を傾けていた。

冒頭あいさつにおいて、宮原理事長は、「『地域経済の活性化』と『行政効率化』に資する道州制という観点から、精力的に検討を行ってきた。一般には概念的、制度論的な提言が多い中、今回取りまとめた報告書は『具体性』と『定量性』が特徴になっており、本シンポジウムが道州制の意義を理解する一助になることを期待する」と強調した。

続いて基調講演を行った杉浦衆議院議員は、第3次中間報告の取りまとめ状況(自民党道州制推進本部)や、同報告と道州制ビジョン懇談会の中間報告(3月24日公表)および日本経団連の第2次提言中間取りまとめ(3月18日公表)との比較について言及した。その上で、「地域のことは地域で決めるべきで、中央集権的な体制を解体しないと日本の将来はない。次期衆院選では、自民党の公約に道州制導入を掲げ実現をめざしたい」と述べた。

その後、林研究主幹が、「地域再生戦略と道州制〜九州をモデルとしたシミュレーション分析を中心に〜」と題して報告を行った。林氏は、地方経済の現状と課題や、道州制の意義等を、各種の興味深いデータに基づいて説明した。その上で、広域化による行政効率の改善と、分権による社会資本の効率的・重点的整備で最大9000億円の効率化効果が、九州に道州制を導入することで得られるとする試算を示した。また、道州制の導入が国民の満足度向上にどの程度寄与するかも数値化して解説し、意義を強調した。

パネルディスカッションは、「魅力と活力ある国と地方圏の形成を目指して」をテーマに行われた。林研究主幹がモデレーターを務め、パネリストとして、杉浦議員、河野俊嗣宮崎県副知事、高林喜久生関西学院大学教授が参加し、(1)国・地方の現状と課題(2)道州制の意義・目的(3)道州制実現に向けての検討課題――というテーマを中心に活発な議論が展開された。この中で河野副知事は、「役所は与えられた枠組みの中で仕事をしており、その枠組みをどう変えるかというところまでは、なかなか発想が及んでいない」と指摘した。また、高林教授は、道州制の主役は道州ではなく、基礎的自治体でなくてはならないと述べた。

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