日本経団連は15日、東京・大手町の経団連会館で中小企業委員会(指田禎一委員長)を開催し、法政大学名誉教授・学事顧問の清成忠男氏から「中小企業の課題」をテーマに講演を聴取した。概要は次のとおり。
これまで中小企業は、一つの固定的階層としてとらえられ、「経済的弱者である」「製造業かつ下請け企業である」などといった固定観念を持たれがちであった。しかし、グローバル化、サービス経済化の進展等により中小企業をめぐる環境が変化している今日では、それぞれの企業において持続性や業態等にさまざまなバラツキが出てきているため、中小企業を一つの固定的な階層としてとらえることは不可能になっている。そのため、これまで抱いていた中小企業観を再検討する必要があることを指摘した。
このような中小企業観の変化を踏まえた上で、中小企業の特徴として次の4点を挙げた。
現在、経済活動の中心が首都圏・中京圏に集中しているため、その他地域との格差が拡大している。このような地域では既に少子・高齢化による人口減少社会を先取りしており、人口減による税収減、高齢化による支出増により地方税を上げざるを得ない状況である。このような中、たとえ地域内で産業を興したとしても、税負担の増加によって住民の可処分所得が減少しているため、消費が増えない。そこで、いかにして地域外の市場を開拓していくかということが重要になり、そのためには中小企業が担い手となって、新産業を創出し、地域を再生させていく必要があることを指摘した。
以上の点を踏まえた上で、中小企業の今後の課題について次の三つを挙げた。
一方、中小企業政策は、1999年の中小企業基本法の改正により、それまでの政策から大転換された。今後は、規制緩和により新規参入を促進していくことと、企業家能力の育成に向け、ビジネススクールの質的向上を図っていくことが必要であると指摘した。