日本経団連は15日、提言「財政健全化に向けた予算制度改革」を公表した。同提言は、財政改革を着実に実施するための体制整備の観点から、立法府および行政府が取り組むべき課題について、経済界の考え方を明らかにするものである。同提言の概要は、次のとおり。
わが国財政は、国と地方を通じた長期債務残高が778兆円、対GDP比147.6%(2008年度末)と、先進国中で最悪の状況にある。そのため、日本経団連では、中長期的な財政健全化目標の設定や、消費税を含む歳出歳入改革のあり方など、財政規律の回復に向けた具体的方策について繰り返し提言を行ってきた。
一方、財政健全化に向けては、こうした量的側面の見直しに加え、制度面の再構築が不可欠と考えられる。これまでも立法府および行政府においては、予算制度に係るさまざまな取り組みが行われており、その結果、新規国債発行額の減額、基礎的財政収支の改善など、一定の成果がみられる。しかし、高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増大など、財政健全化に向けてはいまだ多くの困難が待ち受けていることや、小選挙区制の導入や頻繁な国政選挙の実施といったわが国政治体制の特徴を踏まえると、より踏み込んだ改革により、財政健全化への着実な取り組みを制度的に担保することが重要と考えられる。そこで、国会が財政改革に関して一定期間にわたるコミットメントを形成し、内閣がこのコミットメントをベースに、政策評価の結果を十分に活用しながら、毎年度の予算編成を行うという仕組みを提案している。
こうした仕組みを具体化すべく、立法府がまず行うべきは、行政府の協力の下に、「歳出歳入改革法(仮称)」の制定などにより、今後5年間程度の財政改革目標について、必要不可欠な歳出増加に対応した財源確保を含め、一定のコミットメントを形成することである。このコミットメントは、一般会計ベースでの基礎的財政収支黒字化、さらには国債残高GDP比の安定的低下をめざすものとする。また、景気の大幅悪化など、やむを得ない事情が発生した場合の弾力条項を設定することも必要である。
行政府は、立法府が示した目標の範囲内で、毎年度、政策の優先順位に基づき分野別・分野内の予算配分を行う。その際、特に政策評価を予算配分の合理化・効率化を図るためのツールとして活用することが重要となる。そのためには、政策目標の数値化、分野横断的な政策評価体系の確立を進めた上で、評価結果を一定のルールに基づき予算配分に反映させる必要がある。さらに、組織面からも、政策評価と予算編成の連動性を高めるべく、政策評価と予算編成の担当部局が連携を強化することが求められる。
財政構造改革の実現には継続的な取り組みが不可欠であるため、立法府には、将来にわたり、財政改革に関する一定のコミットメントを常に持つことが求められる。コミットメントの内容として、一般会計の基礎的財政収支黒字化後は、債務の利払費までをカバーする財政収支の改善に向けた赤字縮減を目標とすることが考えられる。加えて、立法府において財政問題に関するより充実した審議を行うために、両院事務局の調査能力をさらに強化することも肝要である。
また行政府には、分野横断的な政策評価を徹底し、ゼロベースの観点に立った予算編成をめざすことや、予算編成と政策評価の連動の徹底に向けた体制整備を検討することが求められる。