日本経団連の産業技術委員会産学官連携推進部会(西山徹部会長)は3月31日、「大学・大学院改革に向けた取り組み等に関する報告書」 <PDF> を発表した。報告書は、この1年間の大学・大学院改革に関する主な動向、昨年3月に発表した提言「イノベーション創出を担う理工系博士の育成と活用を目指して」のフォローアップ状況、大学の取り組み状況、今後の課題をまとめたものである。同報告書の概要は次のとおり。
大学・大学院改革に関しては、この1年の間にも教育再生会議をはじめ各方面でさまざまな検討・提言がなされている。それらの検討・提言での共通の指摘事項は、「高度人材の育成のため、産業界と教育界のきめ細やかな対話、具体的な行動が重要」「激しさを増すグローバル競争をわが国が勝ち抜くため、大学・大学院の研究・教育両面での国際競争力強化が必要」の2点である。
高等教育に関しては「イノベーション創造型人材の育成」をテーマに、企業が求める人材像、大学・大学院への期待、政府が果たすべき役割などについて意見交換した。
産学の関係者による座談会では、イノベーションの推進と高度理工系人材の重要性、産学連携による大学院教育の機能強化などについて議論した。
日本経団連が毎年公表している倫理憲章を改定し(07年10月)、早期採用選考活動の自粛が修士課程修了者にも適用されることを明確化した。
博士課程在学生が企業・社会を実際に学ぶ機会として、日本化学会の主催(日本経団連の後援)で化学分野における「博士セミナー」を開催した。
奨学金制度を設けている企業(回答69社中25社)のうち8割(20社)が、返済不要な給付型奨学金を給付していることが判明した。
サバティカル制度(大学教員の留学や研究のための半年〜1年の長期休暇制度)、共同研究等の活用による大学教員と企業との人事交流の促進について、大学と企業の関係者で検討した。
04年度から、共同研究に入る前の段階において、企業と大学の間で十分に議論をし、双方が合意できる共同研究計画を策定するプロセス(Proprius21)を推進している。
06年度から、修士課程と博士課程を連結させて博士学位取得の標準修学期間を3〜4年とする博士一貫コースを設置している。
08年度に、学生のキャリア目標に応じた教育プログラムを提供する「新教育プラン」を開始した。
産学協同で産業界に貢献できる博士課程修了者の輩出をめざす、企業との連携による新たな教育スキーム「トライアングル・フォスター・プログラム」の導入を検討中である。
提言「イノベーション創出を担う理工系博士の育成と活用を目指して」のフォローアップを引き続き行う。特に、優れた人材を内外から集め、大学が育成し、企業が活用していくため、留学生の“質”と“量”の両面での向上策を検討する。