日本経団連タイムス No.2901 (2008年4月10日)

イラク国会議員団との懇談会開催

−イラクを取り巻く状況や日本との関係で意見交換


日本経団連は3月25日、東京・大手町の経団連会館でイラク共和国国会議員団との懇談会を開催した。懇談会ではイラクを取り巻く状況や日本との関係などについて、活発に意見交換が行われた。イラク側の発言概要は次のとおり。

アル・ムトラク議員(国民対話イラク戦線、スンニ派)

両国の経済関係の歴史は古く、1970年代から多くの日本企業がイラクに進出し活動してきた。イラクは石油や鉱物資源に恵まれ、日本は高い技術を有する。イラクが日本の技術を活用し、日本はイラクの資源を利用する互恵的関係を強化したい。治安面の不安から企業にとって活動しづらい状況にあるが、両国の協働により乗り越えていきたい。他国の企業がイラクに進出する中、日本企業が後れをとるのは好ましくない。日本企業にもイラク復興に参画してほしい。
優れた人材を擁する日本企業がイラク企業とジョイントベンチャーを組めば電力や石油エネルギーのプロジェクトで協力できる。また、セメントや農業分野などへの投資も有望である。日本政府による復興支援に加えて、多くの分野で日本企業の投資が必要である。我々は投資法を制定し、企業が活動しやすいようにした。環境分野でも資機材の供与などで協力してほしい。

アブドル・ラティーフ議員(無所属、シーア派)

イラク経済は新しい分野を開拓、発展させていく時期にある。2006年の投資法制定に続き、石油ガス法がまもなく成立する。イラクは石油開発に熱心に取り組んでおり、採掘・生産・輸出の一連のプロセスを近代化することで生産量を現在の日量200万バレルから800万バレルに増強したい。また、単に原油を輸出するだけでなく、石油製品の輸出をめざして関連産業を強化したい。石油施設はテロの発生する都市部から離れており治安の問題はない。国外からの遠隔操作で業務を行うことも可能だろう。
イラクは入札によって多くの物品を輸入している。国民の70〜80%が農業に従事しており、日本から新しい農業機械を購入したい。また、300万戸の住宅を必要としているので、資機材の輸入も含めて住宅分野にも参入してほしい。

アル・ジャザイエリ議員(イラク国民リスト、シーア派)

イラクでは、イラク戦争や湾岸戦争などを通じてあらゆる物が破壊され、多くの産業が被害を受けた。外国からの効果的な支援を必要としており、中でも日本を重視している。石油、ガスもこれから開発が本格化するところであり、日本企業に協力してほしい。また、道路、港湾、橋梁、空港、住宅などの建設分野や通信分野にも多くのビジネスチャンスがある。さらに人材開発はあらゆる分野につながる重要な課題であり、多くの経験を有する日本の協力をお願いしたい。
現在の治安情勢を考えると、イラク企業とのジョイントベンチャーを組むなどの工夫が必要だ。さまざまな方法で企業が協力し経済活動が活発化すれば、治安も改善していくだろう。

アル・アーミリー議員(統一イラク連合、シーア派)

イラクは新しい法治国家としての時代に入ろうとしている。経済活動をさらに促進する法律も制定する予定である。日本政府による復興支援に続いて、日本企業がイラクで活動できるような経済状況になりつつある。5月にカイロで多くの外国企業を招いて投資家会議を開催する予定であり、日本企業にも参加してほしい。

アハマド議員(クルド民主党)

クルド地域の治安は比較的安定しており、建設需要は旺盛であるが、電気、水などのインフラの水準はいまだ高いといえず、日本企業の協力をお願いしたい。また、北部エルビルとスレイマニアからはドイツや英国、米国への直行便が運航しており、日本への就航を期待している。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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