日本経団連は3月25日、東京・大手町の経団連会館で中小企業委員会(指田禎一委員長)を開催し、キュービーネットの岩井一隆社長から「理美容業における生産性向上の取り組みについて‐『時間』の可能性を切り拓く」をテーマに講演を聴取した。概要は次のとおり。
同社は「QBハウス」というヘアカット専門店を展開している。現在、日本国内に372店舗を出店するとともに、香港やシンガポールでも事業を展開している。
同社は効率性の追求により、短い時間でサービスを提供することをめざしており、ヘアカットを10分1000円で行うというスタイルで事業を展開している。この10分という時間は、実際に理美容師が鋏を動かして髪を切っている時間を観察・分析した結果から設定されており、一般的な理髪店が行っている洗髪や髭剃り等は行わない。「髪の毛を切る」ということだけに特化することで、無駄を省略でき、生産性の向上につながっている。
日本国内におけるQBハウスの出店にあたっては、全国各地に出店するのではなく、七つの大都市圏エリアに重点を置いて出店している。このようにエリアを限定している理由としては、単純に売上や利益が見込めるということだけではなく、出張費等のコストが回収できるかどうかということまで考えているためである。
10分カットのQBハウスを事業の柱としつつ、他の柱を育成することにも取り組んでいる。その一つが、女性をターゲットにした新ブランド「Quatre Beauté」の展開である。女性客へのアンケートで、10分では時間が短く、希望の髪型を伝えられないのではという不安の声が多数あった。そこでこのブランドでは、20分2000円という時間・料金設定をし、女性客の要望に応えられるようにするとともに、女性客が入りやすいように店舗家具等を工夫している。
もう一つの事業の柱としては、小さな子どもを持つ親をターゲットとしたQBハウスの展開である。これは店内に子どもが遊べるスペースを設けることで、子どもを気にせず髪を切ってもらえるようにしている。
同社が行っている、短い時間で、かつリーズナブルな値段でサービスを提供していくというビジネスモデルは海外でも通用すると考え、シンガポールや香港などに積極的に出店している。
これらの国々では日本よりも規制が少ないため、日本とは違った店舗展開が可能となっている。具体的には、日本のように駅やショッピングセンターなどの一角に店舗を構えるのではなく、一坪ほどの大きさの組み立て式家具による店舗をショッピングセンターの通路に設置し、営業を行っている。これら店舗は、一坪という狭いスペースで営業ができるため、賃借料が安く済む上に、家具であるため償却負担等も少なく済むので、非常に高い収益を生むことが可能である。
現在出店している国で収益を上げることができていることから、今後についても、他のアジア諸国等を中心に積極的に展開していく方針である。