日本経団連は17日、東京・大手町の経団連会館で、グエン・フー・チョン・ベトナム社会主義共和国国会議長を招き、昼食懇談会を開催した。同懇談会には日本経団連側から御手洗冨士夫会長はじめ副会長、評議員会副議長など12名、ベトナム側から国会議員など12名が出席した。
冒頭、御手洗会長は、ここ数年、日本経団連とベトナムとの間に戦略的なパートナーにふさわしい緊密な関係が構築されていることを強調。2006年11月、130名を上回る日本経団連のミッションがベトナムを訪問し、チエット国家主席やズン首相との間で、日越経済関係のさらなる緊密化に向け意見交換を行ったことや、政財界トップレベルの頻繁な往来に合わせて、貿易・投資がますます拡大している現状を指摘し、日本における「ベトナム・ブーム」が当面持続することを確信していると述べた。
他方、ベトナムが魅力的な投資先として比較優位を維持するためには、両国の関係者がさらに努力を重ねる必要があり、日本経団連としては、現在交渉中の日越経済連携協定(EPA)を早期に締結することで、両国の貿易・投資関係を一層緊密化したいと述べた。
これを受け、チョン国会議長は、ベトナムは日本のこれまでの経済協力を高く評価しているとし、とりわけ日本経済界がベトナム経済の発展に大きく寄与していることにつき謝意を表明した。
さらに、今後とも、アジアの平和と繁栄のため、戦略的パートナーシップを一層発展させることが必要であるが、近年の両国首脳の往来によって、二国間協力を促進していく環境が整備されつつあると述べた。
また、例えばズン首相(06年10月)およびチエット国家主席(07年11月)の訪日の際に発出された共同声明は、両国関係が発展していく基盤となると指摘し、今後、これら共同声明において合意された内容を具体化していくことが求められると述べた。さらに、チョン国会議長は、今後、ベトナムの投資・ビジネス環境整備のための枠組みである「日越共同イニシアチブ」や日越EPAを促進していくことが重要な課題であるとした。
続いて行われた意見交換では、日本経団連側から、ベトナムがさらに発展していく上で、投資・ビジネス環境整備や人材育成が重要であると指摘しつつ、日本経団連がベトナム日本商工会と連携して、ベトナムの大学に奨学金を供与していることや、法律などに関係する専門家を育成すべく、各種教育プログラムを検討していることなどを紹介した。さらに、ベトナムで最近頻発している違法ストライキについても問題提起し、労働法の手続きを踏まない違法なストライキに対するベトナム政府の厳正な対処を求めた。
これを受け、チョン国会議長や同席した国会議員からは、ベトナムにおける訓練施設や学校は国際的な水準には至っておらず、日系はじめ外資企業のニーズに応えられていないと現状を分析した。さらに、外資企業における採用を促進する観点から、質の高い訓練機関を設け、人材育成を進めることが緊急の課題であるとの説明があった。他方、違法ストライキ問題への対応として、ストライキ権行使の手続きなどに関する章を追記した労働法改正などの取り組みを紹介するとともに、最も重要なことは、改正された法律を現場レベルでどのように運用していくかである、との見解を示した。
最後に、チョン国会議長は、懇談会の場を設けた日本経団連に感謝するとともに、引き続き忌憚のない意見交換を行い、両国の経済関係強化を図りたいと締めくくった。